この状況、筆者には2016年の国民投票で、「ブレグジット」を決めた直後の英国に重なって見える。EUからの離脱は民意であったが、それを実行した場合、政治面でも経済面でも英国は失うものが大きいことは明らかだった。それでも引くに引けなくなった。英国はその後、苦労の末にEUから離脱した。そして10年後の今から振り返ってみれば、ブレグジットは明らかに英国の国力を削いだように見える。
高市内閣は「責任ある積極財政」を実施するという。確かに民意は得ているので、その意味での「責任」は果たしている。ただし「責任ある積極財政」が、「秩序ある積極財政」となる保証はない。そのためには市場の信認を得なければならない。
今では日本国債の取引の3分の1が外国人である。ちょっと前まで「日本国債はほとんど日本人が保有しているから安全だ」と言っていた人たちが、今では「外国人も買ってくれているから安全だ」などと言っている。だったら彼らが売りに回った時にどうするのか。
もはや忘却の彼方かもしれないが、「与野党のどっちが勝っても消費税減税」という構図ができあがった1月20日、債券市場では長期金利が2.380%と27年ぶりの高水準となった。さらに超長期の40年物国債は、発行開始以来、初めて4%を上回った。誰かが「日本国債の売り仕掛け」をしたと考えるのが妥当だろう。
「積極財政」の前途は多難
ただし、財政規律に警鐘を鳴らす「債券自警団」が動き出したのだ、と受け止めれば、それはそんなに悪い話ではない。日本ではちょっと前まで、YCC(イールドカーブ・コントロール)という異次元の金融政策が採られていて、10年物国債金利はゼロに張り付いていた。それがちゃんと動くようになって、危機の際にシグナルを発してくれる。
だから政府には軌道を修正する余地が生じる。アメリカのドナルド・トランプ大統領のTACOトレードがいい例で、「俺、そんなこと言ったか?」などとしらっと訂正してしまえばいいのである。
トランプ大統領はビジネスマンとして、何度も倒産した経験の持ち主である。だからいざというときには、危機回避スイッチが入る。高市首相はそこが違って、間違いを認めるのがお得意ではないらしい。「台湾危機発言」は致し方ないとして、「円安ホクホク発言」は訂正したほうが良かったのではないだろうか。
市場には腹黒い人たちが居て、誰かの発言を契機に売買を仕掛けたりするものだ。正義感が強い人ほど、彼らの「カモ」になりやすい。高市内閣の「積極財政」の前途は多難だと思われてならない。
かつて太平洋戦争の開戦前夜、御前会議に出席した米内光政元首相は、「ジリ貧を避けんとしてドカ貧にならぬように」と述べたそうである。それでも東條英機内閣は対米開戦に突き進んでしまうのであるが、それに近いような危うさを筆者は感じている(本編はここで終了です。この後は競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承下さい)。


















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