身なりを重視しない人に「欠けている視点」

勝負は「印象の手前」から始まっている

彼女は小柄な可愛らしい見た目の女性だったのですが、帰り道の駅のホームで、ハイヒールを履いている私に、「あなた、今日のアポで上司を見下ろす恰好してくるなんてどういうつもり?」と怒ったように言いました。確かにその時の見た目は20㎝近く私の方が背が高くなってしまっていました。

ハイヒールの高さだけで、場がぶち壊しになる

「背の高さなんて、どうしようもないじゃない!」と思っていると、「先方がどんな印象を持つか、よくよく考えたんでしょうね。私に何か決定的なことを言わせるのに、私をどう見せたいか考えた結果なんでしょうね?」と冷静に言われたのです。そして、「あなたは、3㎝以下と5㎝くらいとそれ以上と3種類、黒のヒールを机の下に置いておきなさい。そしてその場にふさわしいヒールを選んでアポに行くこと!」と命じられました。

不服気な私に彼女は、「どんな場にするか、どんな風に見られたいか、事前に考えることが何より大事なのよ。わかる?わかるまでは私の言う通りにしなさい!」と言いましたが、それがちゃんとわかるまで、随分と時間がかかったと思います。

例えば、年配で昔気質の社長が商談相手でたまたま小柄な方だったら、ピンヒールを履いた小娘に見下ろされて謝罪されることでどんな印象を持ったでしょうか。同じ趣旨でも、目線を合わせて丁寧にご説明した方がよほど心証がよいはず。この上司同行アポでも、責任者として重々しく話をしてもらう場にするなら、私の存在感はどのようなものにしておくべきだったでしょうか。

上司の言う通り事前によくよく考えていたら、ピンヒールを履いて上司より明らかに「でかい」姿で行こうとは思わなかったに違いないのです。このときの教訓は、今の私にとっても、マネジメントサイドにいた頃の私にとっても、胸に留めておくべき素晴らしい教えだったと心から思っています。

よくビジネスでは第一印象でほとんどの成否が決まると言われます。見た目や立ち居振る舞いがどれだけ重要かについて書かれた書籍も多く見かけます。自分自身は、見た目で何かを決めたりした記憶がないのでぴんとこないけれど、採用面接や重要な商談、プレゼンテーションではきっとそうなのかなあ、程度にしか思わないかもしれませんね。

私も、これまでのビジネス人生で、判断する経験を多くしてきましたが、意識的に「印象」で何かを決めたことはないと思います。

でも、無意識に「印象」が、決定を下す要因にはなっていると思うことはあります。例えば、「信頼できそう」とか「きちんとしている」とかそういったことが。また、誤字脱字の多い企画書で説明されても、そこで目が止まってしまい、内容が頭にすらすら入ってこないといったこともあります。でも、私が教えられたことも、後輩たちに伝えたいことも、そういうことだけではないのです。

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