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日本の小説には「静かな日常の美しさ」が描かれている…大好きな小説の"聖地巡礼"で鎌倉へ行ったフランス人夫婦が見つけた「暮らしを愛でる感性」

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フランス在住のナデージュさんとアントニーさん夫妻。日本の小説を好きになったことをきっかけに、鎌倉を訪れた(写真:筆者撮影)
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日本を訪れるきっかけとなったのは「小説」

南西フランス・バスク地方の都市バイヨンヌで暮らしている陶芸家のナデージュさんと医者のアントニーさん夫妻は、小川糸著の小説『ツバキ文具店』の大ファンである。

だから、彼らの初めての日本旅ではその舞台である鎌倉を訪れた。『ツバキ文具店』の小説の中で、主人公は鎌倉の山のふもとにある小さな日本家屋に住み、先祖代々続く代書屋をひっそりと営んでいる。

「主人公は他人の気持ちをくみ取って代わりに文章を書くだけでなく、依頼主の背景や状況に合わせて適切な紙や筆跡を選ぶ。その行為はとても詩的でした」とアントニーさんは言う。

小説の中では、「悲しみのあまり硯に涙が落ちて薄まった」と弔意を表現するために淡い墨色でお悔やみを書く場面がある。文字の濃淡そのものが感情になる。言葉の意味だけでなく、にじみやかすれ、行間までもが、送り手の心を代弁するのだ。

そこには単なる代筆を超えた、ひとつの“儀式”のような時間が流れている。手紙を書くことは、誰かの人生の節目を静かに整える行為でもあるのだ。

紙、インク、筆跡、季節感、そして余白までも含めて、ひとつの感情を形にする。その繊細な営みは、陶芸家が土の質感や釉薬の色合い、器の線に心を配るのとどこか通じているのかもしれないと感じた。

小説は、アントニーさんの同僚の日本人医師に勧められたのだそう(写真:筆者撮影)

この小説が好きな理由は、「よくある静かな普通の日常の話だから」だと2人は語る。作中では、鎌倉という土地柄もあり、神社の祭礼や季節の行事がごく自然に生活の中に溶け込んで登場する。登場人物たちの時間の流れは、それらの行事や四季折々の風景と一緒に進んでいく。

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