「熱意あふれるES」「高い授業出席率」…意欲を感じさせる若者の行動に隠された真逆のホンネ。Z世代が「穏やかでのんびりした先生」を好む理由とは

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そもそも自己実現系の若者が失敗すれば「ああ、同じことをやらなくて良かった」と思いますし、成功すれば「私とは違う能力を持っているから」「親の力があるから」というように思います。

『無敵化する若者たち』では、金間先生が「若者の5年後の幸福度調査」の結果を紹介していますね。その中の1つに、人の能力を決定づけるのは「生まれ持った才能や環境」か、「その後の努力」か、という問いがありました。

50代は「その後の努力」を選択した人の割合が多いのですが、20代は「才能や環境」を選んだ人が6割。ただ、この差はある意味、当然の結果とも言えます。努力が報われた環境の中で育ってきた世代と、親に大切にされて育ってきた世代の違いですから。

いずれにせよ、大谷翔平がいくら頑張っても、「大谷は別格」「もともと才能があるから」と、自分とは切り離して考えるのが今の若者ということです。

熱血指導をする教員のゼミは不人気

また、彼らは、熱意ある教員に感化されるということもありません。熱血指導をする教員のゼミは、「いい子症候群」の学生には人気がない。本気のやる気が求められますから。それに学生の教育に情熱を持っている教員は、チャイムが鳴ろうが何だろうが講義を続けますが、そういう先生も学生からは評価されません。単位を取るにはタイパが悪いし、そもそも授業についていけないからです。

このあたりは、金間先生の調査データと共通する部分がありそうです。先ほどの金間先生の調査結果でも、「仕事に情熱を持った上司(先生)より、穏やかでのんびりした上司(先生)がいい」という設問に対し、「当てはまる」と答えた若者が8割を超えていました。

—私たちの働きかけによって「無敵化する若者たち」を変えることはできるのでしょうか。

山田 「いい子症候群」の若者たちを変えることはなかなか難しいと思います。金間先生はご著書の最後に、若者たちのモチベーションではなく、行動に着目してフィードバックしようと提言されていますが、私もこれに賛同します。残りの教員生活では、金間先生の提言をまずは試してみようと思っています。

彼の言うように、価値観は人それぞれであって、今の若者世代の価値観が私たちとなじまないからといって、それを批判しても意味がありません。家庭環境や日本の社会システムの問題ですから、社会学的な視点で捉えてみる必要があると思っています。

(構成:笹幸恵)

山田 昌弘 中央大学 文学部 教授

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やまだ・まさひろ / Masahiro Yamada

1981年、東京大学文学部卒業。1986年、東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。現在、中央大学文学部教授。専門は家族社会学。

親子・夫婦・恋人などの人間関係を社会学的に読み解く試みを行っている。学卒後も両親宅に同居し独身生活を続ける若者を「パラサイト・シングル」と呼び、「格差社会」という言葉を世に浸透させたことでも知られる。また、「婚活」という言葉を世に出し、婚活ブームの火付け役ともなった。『結婚不要社会』、『新型格差社会』、『パラサイト難婚社会』など著書多数。

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