新しい業務を説明すると、「どうして変えなくちゃいけないわけ? 俺たちは10年前からこのやり方でやってるんだよ。そんなやり方でうまくいくわけないだろ!」と言われたのです。
筆者も若気の至りで「10年間同じやり方ってことは、古いってことですよね」と正面からぶつかってしまい、かなり険悪なムードに……。プロジェクトは何とか成功しましたが、後味は決してよいものではありませんでした。
そんな経験などから、仕事を進めていくうえでは、専門性や業務スキルだけを極めてもうまくいかないのだと悟った筆者は、キャリアチェンジをし、外資系コンサルティング会社プライスウォーターハウスコンサルティング(現IBM)の門をたたきました。そのくらい、筆者にとっては強烈な原体験となったのです。
では、具体的にはこうした問題はどうやって乗り越えていけばいいでしょうか。
まずは重要なキーワード、「利害関係者」について正しく理解しましょう。英語では「ステークホルダー」という言い方をし、何かコトを起こすにあたり、「利害」を受ける人という意味です。文字どおり「利益(よい影響)」と「被害(悪い影響)」のどちらも含みます。何かコトを起こすときに、この利害関係者をすべて洗い出して、その人たちが受けるよい影響、悪い影響を認識できているかどうかが、まずは出発点です。
利害関係者のパワーバランスを「見える化」
少し具体的なケースで考えてみましょう。
あなたは急成長している中小企業の総務部門に所属、新しい管理制度を導入するリーダーだと思ってください。この会社はややワンマン経営の傾向があり、社員は社長の指示第一で動いてきましたが、さらに成長するためには権限移譲が必要になってきました。
社長もこれまで何度か権限移譲を試みたものの、そのたびに指示待ち体質の社員や管理職がついていけず、試みは頓挫してきました。そこで、あなたが手掛ける新制度には、社長も大きな期待を寄せています。さらに新制度の導入に伴い、社員のスキルアップが不可欠なため、人事部と別に研修教育部を新設することになりました。さてこうしたケースでは、いったいどんな利害関係者がいるでしょうか?
この利害関係者のバランスを見えるようにするツールが「ステークホルダーマップ」です。
何かコトを起こそうとしたときに、縦軸にその関係者が持つ「コトへの影響力」、横軸に「コトに対する姿勢」を取り、その大きさによって、関係者をマッピングしたものです。
このステークホルダーマップを作るにあたり、各関係者について考えることには、次の5つがあります。
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