ここから得た教訓があった。超低金利のときには、金は借りてはならない。銀行が熱心に融資の営業をかけてくるときに、その話に乗ってはならない。
高金利のときに、金を借りたとしても、会社が急激に成長をしているときなら、返済してゆくことが可能かもしれないが、低金利の時代に借りた金は、たとえ金利払いが少なくとも、元金を返済してくのは至難である。
これは私が実際に体験してきたことでもあった。一見、真逆に見える金利と借金の関係だが、本書が示しているグラフを見ていて、そのときのことを思い出したのである。まあ、金利の高い低いにかかわらず、銀行から金を借りるのは、極力控えるのが賢明なやり方には違いがない。
ハイパーインフレは貨幣現象ではない
MMTの2つ目の重要なポイントは一方の負債は、他方の資産であるということである。
したがって、この理論によれば、政府の赤字は、国民の借金だと言われ続けてきたことはまったくの嘘だということである。政府の赤字は国民の資産だと言い換えられるべきなのだ。
なぜなら、国民の側の手元にある国債は、M2のところで説明したように少し時間はかかるかもしれないが、現金化することができるものだからだ。
政府債務が問題なのではない。大量の国債発行が、ハイパーインフレを引き起こすというのも、過去の歴史をつぶさに観察すれば、ずいぶん怪しげな推論だった。
本書に実に印象的な言葉がある。「インフレは貨幣現象ではない」というものである。過去のハイパーインフレをつぶさに観察すると、そこに見えてくるのは、貨幣現象というよりは、戦争や、政治的な圧力によって生じた原油、天然ガス、小麦といった主要品目の高騰が大きく影響していたことがわかる。
貨幣現象がインフレを引き起こす原因ではなく、政治的な不作為や紛争による現物流通の停滞こそが問題なのである。
もし問題があるとすれば、それは政府債務の多寡にあるのではなく、民間債務の累積のほうである。
そして、一国における総債務の急増が、金融的な災厄を引き起こすということも、リーマンショックやブラックマンデーなどの歴史が示す事実であった。
深刻な問題は、債務急増が、経済格差を広げてしまうというところにある。あるいは、急激なバラマキによって、政府および中央銀行の国際的な信用が失墜し、円安の亢進によって国民生活が窮乏化してゆくこともある。
貨幣が貨幣として流通している理由は、それが貨幣として流通しているからである。この同義反復が意味しているのは、貨幣とは信頼によってその命脈を保っているということだ。かつての軍票がそうであったように、信頼を失えば、貨幣はたちまち、紙屑になる。


















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