「がまんは美徳」と腹痛を耐え死にかけた男の結末――「たかが」と侮ってはいけない命に関わる腹イタの正体。昔と今では違う"治療の新常識"

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「実際には、患者さんごとにCTや超音波検査で虫垂の炎症の程度を確認し、また痛みや経過などから、いったん薬で炎症を抑え込むべきか、すぐに手術を行うべきかを総合的に判断します」と菊池医師。

ただ、薬で抑えても、1年以内に再発する割合は50%ほどなので、炎症が落ち着いたところで、早めに手術をしたほうがいいそうだ。

虫垂炎の手術は、おなかに5~10ミリ程度の穴を数箇所開けて行う腹腔鏡下手術で虫垂を切除するケースが多い。「開腹手術に比べて大きく切らないので回復が早く、すぐ動けるというのが利点」と菊池医師。

虫垂炎で命を落とすことも

ただし、これが腹膜炎を併発しているとなれば、話は別だ。

「虫垂炎で起こる腹膜炎は、破れたり壊死(えし)したりした虫垂に溜まった便や膿がおなかの中に漏れ出し、炎症を起こした状態です。放置したら便中にいるバイ菌や有害成分が血液中に入り込み、敗血症という命に関わる状態を合併してしまうおそれもあります」(菊池医師)

そのため、腹膜炎を併発している場合は、生理食塩水などでおなかの中を洗浄する必要がある。したがって、この場合は開腹手術になることが多い。

樋口さんの場合は、炎症の程度がひどく、腹膜炎の一歩手前だったため、緊急で開腹手術をするしかない状態だったのだ。

虫垂炎の手術後の食事は、消化に良いものから少しずつ増やしていく。よく「おならが出たら食事を摂っていい」と言うが、これは医学的に本当なのだろうか。

「本当です。虫垂炎の手術後は腸の動きが悪くなる麻痺性イレウスや、腸の癒着による機械的イレウスになりやすい。おならが出れば腸が動いている証拠なので、“食事を摂っていい”という合図になります」と菊池医師は話す。

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退院後も、当分は食べすぎに要注意。便秘や下痢をしやすいので、おなかの調子と相談しながら食事をしたほうがよさそうだ。

最後に、菊池医師は「虫垂炎を軽く見てはいけない」と警告する。

「なぜか虫垂炎は軽い病気と思われがちですが、腹膜炎を放っておくと敗血症になり、亡くなることもあります。特に高齢者や人工透析をされている方は要注意。右下腹部が痛い場合は、早めに病院にかかりましょう」

菊池 大和 きくち総合診療クリニック

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きくちやまと / Yamato Kikuchi

2004年、福島県立医科大学医学部卒。浜松医科大学附属病院にて初期研修医。磐田市立総合病院外科、国立がんセンター東病院呼吸器外科、湘南東部総合病院外科科長・救急センター長、座間総合病院総合診療科などを経て2017年、土日も診療を行う総合診療クリニックであるきくち総合診療クリニックを開業。小児から高齢者まで、救急医療も行い、あらゆる症状を診る「総合診療クリニック」が全国に広がることを目指し、啓発活動にも積極的に取り組んでいる。

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大西 まお 編集者・ライター

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おおにし まお / Mao Onishi

出版社にて雑誌・PR誌・書籍の編集をしたのち、独立。現在は、WEB記事のライティングおよび編集、書籍の編集をしている。主な編集担当書は、森戸やすみ 著『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』、宋美玄 著『産婦人科医ママの妊娠・出産パーフェクトBOOK』、名取宏 著『「ニセ医学」に騙されないために』など。特に子育て、教育、医療、エッセイなどの分野に関心がある。

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