「がまんは美徳」と腹痛を耐え死にかけた男の結末――「たかが」と侮ってはいけない命に関わる腹イタの正体。昔と今では違う"治療の新常識"

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そして、すぐに診察室の隣の処置室で看護師にアンダーヘアを剃られた樋口さん。「まだ20代だったので、一瞬、腹膜炎の痛みを忘れるほど恥ずかしかった」と言う。こうして手術室へと運ばれた。

虫垂炎の治療では、おなかに穴を開けて行う腹腔鏡下手術を行うことが多い。ただ、樋口さんの場合は炎症が強く、その範囲も広かったため、開腹手術となった。手術にかかったのは1時間程度だが、右下腹部に10センチほどの傷が残った。

樋口さんは全身麻酔の影響で眠ってしまったので、気がついたときには手術を無事に終え、病室のベッドにいたという。

え、ウソだろ!?

ただ、悲劇は手術後にも起こった。

「目を覚ますと、痛いというよりも体がだるくて。全身麻酔の影響なのか、耐えがたいほどの倦怠感でした」という樋口さん。ぼんやりとベッドサイドから心配そうにのぞき込む妻と母の顔に、「来てくれたんだ」と安堵したのもつかの間、その先にあった光景に、わが目を疑った。

なんと自分の点滴に違う人の名前が書かれていたのだ。

「え、ウソだろ!?」

だが、これもまた全身麻酔の影響なのか、声を出そうとしても、「うーうー」といううなり声しか出ない。それでも、なんとか重い腕を持ち上げて点滴のほうを指差し、この一大事を伝えようとした。

しかし、懸命な樋口さんの訴えに、妻はまったく気づかない。

それどころか、「もうこれで、大丈夫だよ」と言いながら手を握ってきた。母も「うん、うん」とうなずいていた。

「これはヤバい!と思いました。以前、点滴を間違えて投与されたせいで亡くなった人がいるというニュースを見たことがあったので、本当に怖かったし、パニックになりかけました」(樋口さん)

樋口さんの尋常じゃない様子に、事の重大さにようやく気づいた妻と母が慌ててナースコールをした。点滴は取り替えられ、「栄養と水分補給のための点滴だったので害はない」と看護師から説明と謝罪を受けた。

幸いにも事なきを得たが、以来、樋口さんのなかには「病院選びは重要だ」という意識が残っているという。

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