その後は、若いこともあって順調に回復していった樋口さん。むしろ手術後は空腹との闘いだったようだ。
「よく虫垂炎の手術後に、“おならが出たら腸が動いている証拠”だって言いますよね。実際、おならが出たと看護師さんに報告したら、お粥から軟飯にしてもらえました。すごくうれしかったです」(樋口さん)
1週間ほど入院して、無事に退院。1泊2日の帰省のつもりがずいぶん長くなってしまったが、このタイミングで病気になってよかったと思ったそうだ。「仕事が忙しい妻には迷惑はかけられない。親に来てもらえたから気持ち的にはラクだった」とのこと。
がまんは美徳…ではない
一方、反省点は、早めに受診しなかったことに尽きるそうだ。
「昔は『泣き言を口にしたら負け』とよく言ったし、がまんは美徳だった。そのせいか、痛みに強くなったんですよね。でも、もう少し遅かったら虫垂が破裂して、最悪の場合、命を失ったかもしれないと言われたので、今後は早めに受診しようと思います」(樋口さん)
なお、おなかが痛いと話したときに樋口さんを軽くあしらった妻は、反省しきりだったそうだ。
総合診療かかりつけ医、きくち総合診療クリニック院長の菊池大和医師は、「虫垂は、腸の右下にある“行き止まり”になっている臓器。糞石(ふんせき)という石のように固くなった便が、虫垂の入り口を塞ぐことなどにより、内部に大腸菌などの細菌が繁殖して、炎症を引き起こした状態を虫垂炎といいます」と説明する。
誰にでも糞石はできるため、年齢、性別、生活習慣などに関係なく、誰でも虫垂炎を発症するリスクがある。
「小学生までの小さな子どもはなりづらいですが、それ以外の人はいつなるかわからない病気。これは運としか言えません」と菊池医師。これまで中学生から100歳ぐらいまでの患者を診たことがあるそうだ。
昔は虫垂炎がわかったらすぐに手術が行われたようだが、近年はこのような緊急手術をすることはめったになく、いったん抗菌薬で虫垂の炎症を抑えることが多い。
そのほうが計画的に手術できるため、安全かつ回復も早いからだ。よく聞く「薬で散らす」というのが、これにあたる。


















