国難級災害で"スマホ圏外"の怖さ。能登半島地震の教訓から我々はどう考え、備えるべきか

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一方で、Starlinkの最大の問題は国内のシステムではないという点だ。有事のときには使えない可能性もゼロではない。

「通信インフラは、ナショナルセキュリティの問題だと私も認識しています。Starlinkは便利だったのは揺るがない事実ですが、これからもStarlinkに軸足を置いていいのかというと、国の災害対応としてはもっと違うことを考えるべきだと思います」

宮川さんの話によると、Starlink以外のインターネットシステムとして、国内ではHAPS(High Altitude Platform Station:ハップス)が2027年の実用化に向けて動き出している。HAPSは“空飛ぶ基地局”とも呼ばれ、成層圏(地上約20km)に無人航空機を飛ばして、広範囲に通信サービスを提供するシステムをいう。

さらに、被災地での通信インフラの整備・維持は、避難所から仮設住宅や自宅に戻って生活再建を行う際にも必要な視点だと、宮川さんは訴える。

「今の被災地はどうかというと、多くの被災者はまだ仮設住宅に住んでいます。ガスや電気、水道といったライフラインは整っていますが、ネット環境は必ずしもよくなくて、避難所にあったフリーWi-Fiは仮設住宅にはありません。電波が入りにくい仮設住宅もいまだにあります。災害から2年以上経つのに、です」

生活再建、暮らしの立て直しに欠かせない情報を得るにも、通信インフラが不可欠だ。ちょっと電波が入らない、通信しにくい環境でもストレスを感じる現代において、通信環境が悪いなかでの生活を強いられている被災者。

「生活再建、つまり暮らしを立て直すというところまできて、はじめて災害対応が終わったといえる。そういう意味ではまだ道半ばといえます」

通信障害のリスクにどう備えるか?

本稿では能登半島地震のケースを紹介したが、都心部であっても、内陸地であっても、発災時の通信障害のリスクは変わらない。生活の多くをスマホに頼っている我々だからこそ、万が一のことを考えなければならない。

どう備えればいいのか、宮川さんはこんなアドバイスをしてくれた。

1つは「自分の生活範囲での通信環境を、改めて確認しておくこと。また、どんな通信機器やサービスがあるかも、キャッチアップしておく必要がある」ということだ。停電で使えなくなることも考え、ポータブルバッテリーも備えておいたほうがいい。

「そして、もう1つは今の話と矛盾するようにも聞こえますが、“スマホが使えないなら、使えないなりに何とかする”というマインドを持つこと。

例えば、家族の間で“災害が起こったときは、いつ、○○に集まる”といったことを約束しておいたり、避難所までのルートを複数確認しておくとかです。そういう話し合いも大事です」

宮川 祥子 / 一般社団法人 情報支援レスキュー隊代表理事・慶應義塾大学看護医療学部准教授
1995年の阪神・淡路大震災で災害支援活動を開始。以来約30年にわたり、災害時の情報支援に携わる。
2011年の東日本大震災での経験を踏まえ、災害時に「情報の空白地帯」が発生し支援が滞る課題への取り組みとして、2015年8月に一般社団法人情報支援レスキュー隊(IT DART)を設立、代表理事に就任。
熊本地震、九州北部豪雨、西日本豪雨、北海道胆振東部地震などで活動。能登半島地震では発災直後から情報支援活動を開始、奥能登地域や1.5次避難所での情報通信・情報マネジメント支援を中心に支援活動を行う。
専門分野は看護・医療分野でのIT活用、災害情報学、健康情報学。大規模災害時の被災者ケアにおけるICT活用、GISを活用した保健師活動支援、看護シミュレータの開発などの研究に従事。
【後編をあわせて読む↓↓】日本人の気質が混乱を招くかもしれない…
"日本の防災"が抱える欠陥!? 「善意の混乱」にどう対処するか——危機対応のスペシャリストが伝える「国難級災害への備え」
鈴木 理香子 フリーライター

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すずき りかこ / Rikako Suzuki

TVの番組制作会社勤務などを経て、フリーに。現在は、看護師向けの専門雑誌や企業の健康・医療情報サイトなどを中心に、健康・医療・福祉にかかわる記事を執筆。今はホットヨガにはまり中。汗をかいて代謝がよくなったせいか、長年苦しんでいた花粉症が改善した(個人の見解です)。

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