国難級災害で"スマホ圏外"の怖さ。能登半島地震の教訓から我々はどう考え、備えるべきか
翌日には、かろうじて一般道が通じていた穴水(能登半島の中部にある)まで入り、避難所運営を担っていたNPOのIT環境を整備した。
輪島、珠洲などの奥能登地域には直接入ることはなかなかできなかったが、金沢を拠点にする社会福祉法人やNPOなどがトラックなどで定期的に物資を運んでおり、そこからニーズ情報を得たり、トラック便に支援物資を載せてもらったりして現地に届けた。
通信障害が起こっていた珠洲や七尾、羽咋などの避難所、被災地の役場、自衛隊のレスキューチームなどにもIT機材を届け、少しずつ通信インフラを確保していった。
「“どこのエリアで、どのキャリアがつながるか”というのは、非常に大切な情報。支援に入っている団体に都度、『入り具合はどうか』とヒアリングしていきましたが、それもどんどん変わる。
『ここはドコモが入る』とか、『ここはauしか入らない』とか、そういう情報は常にキャッチアップしていました。各キャリアがウェブ上で日々更新している通信状況も参考にしましたが、特に山間部では公表データとのギャップもありました」
インターネット接続やスマートフォンの通話に必要なモバイルルータを設置する際は、そうした情報を元に、どのキャリアの機材を使えばいいのかを考えたという。結果、IT DARTは輪島市内の15カ所の避難所に加え、志賀や穴水の避難所、各地のNPO活動拠点などに、モバイルルータを設置した。
避難所にいる被災者や、支援活動にあたるボランティアらにとって被災地の情報は、電気や水道と同じくらい重要な命をつなぐツールだ。
どこでどんな被害が生じているのか、どこの道路が遮断されているのか、家族や友人の安否はどうかといったことから、明日の天気や、トイレやお風呂、食事のこと、ケガや病気になったときの受診先など、命や健康を守るため、どれも手に入れたい情報だ。宮川さんが言う。
「被災者の何人かにお話を伺うと、“通信が途絶えたことで情報が入らず、何があったのかがまったくわからなかった”と。発災直後は震源地すらわからず、金沢まで行けば安全なのかもわからないと、話しておられました」
そのうえで、「被災者の1人ひとりが持つ携帯電話やスマートフォンから得られる情報が、(避難や状況確認などの)最初のアクションを起こすためにも非常に大事だと、改めて感じました」と話す。
IT DARTが通信インフラの確保とともに行ったことの1つが、こうした情報弱者となった避難所に過ごしていた人たち――特に高齢者への情報提供だ。
自治体が紙の掲示板を各避難所に設置。NTTコミュニケーションズが市役所などにデジタルサイネージシステム(ディスプレイにさまざまな情報を載せる電子掲示板のようなもの)を提供した。
IT DARTは設置されたサイネージに表示する情報(市のウェブサイトで更新された情報のまとめ)を作成した。たとえば、仮設住宅や弔慰金などの公的支援の申し込みの情報や、水道や道路などのインフラ復旧状況、医療機関に関する情報、罹災証明書などの申請、安全に関する情報(詐欺の注意喚起など)などだ。
能登半島地震で役立ったのはStarlink
話を通信障害に戻す。ネットがつながらない問題を解消するために、企業もいち早く動いた。具体的には、NTTドコモとKDDIは共同で船上の基地局を運用し、ソフトバンクはドローンの無線基地局を導入している、などだ。
これらのなかで宮川さんが「役に立った」と感じたのは、アメリカ・スペースX社のStarlink(スターリンク)。衛星を活用したインターネットシステムだ。衛星から電波をキャッチするアンテナは持ち運びができるので、比較的、必要な場所に設置できる。能登半島地震ではKDDIが提供し、IT DARTは設置や簡易マニュアルの作成に関わった。


















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