出場枠が「32→48」でもW杯出場を逃した… 中国の《卓球が超強くて、サッカーは冴えない》理由 

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卓球は、筋力以上に技の冴えを重んじる。それは中国武術の「柔よく剛を制す(四両撥千斤)」の精神と深く響き合う。さらに、アジア人の優れた瞬発力が、この競技の特性と見事に合致している。こうした個人技術への適性は、体操や飛び込みといった中国が誇る他の個人競技にも通ずる、独自の育成哲学の結晶といえるだろう。

昔、筆者が政府機関の新聞社にいた頃、政府機関の卓球大会の取材で驚かされたことがある。それは、参加者がプロさながらの技術を持ち、誰もが幼少期から研鑽を積んできた強者ばかりだったことだ。

会場には、私の同郷である世界チャンピオンが指導に招かれていた。名選手がアマチュア選手の腕前を称賛するほどの熱戦が繰り広げられ、職員たちは憧れの王者と数回打ち合える幸運に、子供のように目を輝かせていた。

政府機関の男性職員にとって、卓球は嗜みを超えた「必須科目」に近い。現在も卓球大会は盛んに開かれ、国際試合さながらに賞金やトロフィーが授与される。市の直属機関では、通常、年に一度合同の卓球大会が開催される。

また、各市や県・区の卓球協会やクラブによる卓球試合は、不定期に開催されている。政府から民間に至るまで、この国において卓球は、組織の結束と情熱を象徴する特別な活動なのだ。

なぜ卓球への情熱が、サッカーには向かないのか

卓球では無類の強さを誇る中国だが、冒頭のようにサッカーに目を向けると、ワールドカップ出場はわずか一度きりだ。1月20日に発表されたFIFAランキング(男子)では、中国は93位だった(日本は19位、韓国は22位)。

メンツを重んじる中国人が、自国サッカーへの酷評や揶揄には怒らず、平然と受け流すのは、もはや不思議な光景ですらある。

「14億の人口がありながら、なぜ強豪チームを作れないのか」――その答えは、人と制度の両面にある。中国人は、個の技量で盤面を制する卓球は得意だが、高度な集団戦略が求められるサッカーは、その気質的に不向きなのかもしれない。

思えば、中国社会には「個の成功」を尊ぶ伝統がある。科挙(かきょ)の時代から、個人の努力で地位を築くことが最高の栄誉だった。

近年、ヨーロッパの名将をA代表の監督に招聘するなど強化策が講じられてきたが、その足元では深刻な腐敗が根を張り、サッカー人材の長期的な育成を阻んできた。

24年から25年にかけて、元代表監督の李鉄氏をはじめ計18人が収賄等の罪で有罪判決を受けた事実は、その象徴と言える。

「卓球王国」としての地位は盤石だが、今後、サッカーでも競争力を示すことができるのか。その道のりは平坦ではなさそうだ。

黄 文葦 ジャーナリスト

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こう ぶんい / Kou Buni

日本と中国、日本語と中国語を愛する在日中国人フリージャーナリスト。学校法人白萩学園名誉理事。中国の大学と日本の大学院でマスコミを専攻、日中両国のマスコミの現場を経験。2000年来日以降、日本語と中国語で教育、社会、文化の問題に焦点を当てたコラムを執筆し、両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。19年に電子書籍「日中文談: 在日中国人の日本観(エッセイ)」を出版。20年8月から23年7月までの3年間、日中文化比較のメルマガ「黄文葦の日中楽話」を発行。24年10月、「新中国語から中国の『真実』を見る」(風人社)を出版。

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