希少生物の主要な生息地で自然破壊が進む…「釧路湿原メガソーラー問題」釧路市と事業者の激しい攻防

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照井さんによると、太陽光発電の乱開発に対応するなかで、湿原の希少生物の研究者間のつながりがより強くなった。猛禽類医学研究所の齊藤慶輔代表とは、お互いの調査の連携を図っていくことを検討している。

釧路湿原の乾燥化と局所的な乱開発の「ダブルパンチ」

釧路市より北東にあり、釧路湿原国立公園の面積の約45%を有する標茶町で新たなプロジェクト「守れ!キタサンショウウオ!」に取り組むグループもある。平均年齢26歳の「釧路水域保全の会」(城市友美恵会長)。メンバーは高校の教師、会社員、水族館の飼育員など7人で、川に住む生きものの調査の手伝いを通して出会った仲間だ。

副会長の元永康誠(こうせい)さん(25歳)は2024年4月、標茶町博物館の学芸員として就職。キタサンショウウオの卵のうの数が減少していることに気づき、生息数の減少を心配した。湿原の乾燥化が進んでいることが背景にあると知った。

元永さんは町に「AOAO SAPPORO」(札幌市内にある水族館)と提携しての「域外保全」(人工飼育により生息地の外で種を保存)プロジェクトを提案、取り組みが始まった。さらに、「キタサンショウウオが生息する可能性が高いが調査ができていない場所を減らしたい」(元永さん)として、釧路水域保全の会に協力を求めた。

会のメンバーの会社員、戸山魁(かい)さん(29歳)は「湿原の中をぬかるみから足を一歩、一歩抜き出して歩いて調査するのは大変です。上が草に覆われている深さ3m以上の池『やちまなこ』に気づかずに落ちてしまう危険もある。でもこんこんと湧き出る水やタンチョウヅルの親子、淡く青く輝くキタサンショウウオの卵のうを見つけるたびに、この環境を守っていきたいと強く思います」と語った。

キタサンショウウオの卵のうを探して湿原の中を歩く元永さん(左)と戸山さん(写真:釧路水域保全の会提供)

釧路湿原の乾燥化に関して、照井さんは気象条件を詳細に分析したうえで、年間降水量は大きな変動はないが「無降水の日数」が増加するなど気象パターンに変化が生じていることに着目。「湿原をスポンジに例えると、毎日水を垂らしていればずっと水を吸収してずっと湿っているけど、一気に水を注いだら吸収しきれない分は流れ出てしまう」「大量に降った雨は河川に流れ出てしまい、湿原自体の貯水量は少なくなる」と考えた。2025年3月公表の論文で、気候変動の影響によって湿原の乾燥化が進んでいる可能性がある、と述べている。

こうした地球規模の異変にメガソーラーの設置を含む局所的な乱開発が重なれば、湿原の生きものは「ダブルパンチを受け、大ダメージを被る」ことになる。

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