なぜいい人が集まる組織でパワハラが起きるのか? 認知科学が示す、部下を沈黙させる組織メカニズム
なぜ、誰もが違和感を抱いているのに、不健全な空気は書き換えられないのでしょうか。そこには社会心理学でいう「多元的無知(pluralistic ignorance)」というメカニズムが働いています。
これは、多くのメンバーが「自分は問題だと思っているが、他の人は気にしていないはずだ」と誤認し、周囲に合わせて沈黙してしまう現象です。ある調査では、職場の約74%の人が自分だけが違和感を覚えていると誤解していることが示されています。
この沈黙の連鎖が、「誰も異議を唱えないなら、このやり方で賛成多数だろう」という偽の合意効果を生みます。部下は自分が少数派だと誤解し、上司は自分のやり方が支持されていると誤解する。このすれ違いこそが、ハラスメントや思考停止の職場を固定化する原因なのです。
「不快な現実」を直視することからマネジメントは始まる
この負の構造から抜け出す第一歩は、自分たちの組織に潜む不健全な合意を可視化することです。本書『マネジメントの原点』では、リーダーが取り組むべきアクションを提示しています。
意見を求めて「特にありません」が続くときは、多元的無知を疑う。匿名アンケートなどで本音の温度感を可視化するだけで、偽の合意はあっさり崩れます。
「データ的に正しい」「論理的に矛盾がない」と理詰めで畳みかける行為が、現場の本音を封殺する操作になっていないか自問する。
現状を「善悪」で裁くのではなく、「今は不健全な形で合意してしまっているのではないか?」とニュートラルに問い直す。
マネジメントにおいて大事なことは、完璧な判断を下すことではなく、不確実な現実の中でも対話を止めないことにあります。不健全な空気という難敵に立ち向かうために、まずは組織に漂う沈黙の正体を疑うことから始めてみましょう。
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