金を買うのは「世界への悲観」に賭けることだ/「有事の金」に隠された不都合な真実とは?

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では、私たちはどう行動すべきか。答えは驚くほど地味で、しかし理論的には明快である。

資産形成の中核は、全世界の株式市場に分散投資するインデックスファンドであるべきである。それは、世界経済の成長と、企業が生み出す付加価値の果実を、最も効率的に享受する方法だからである。世界の人口は増え続け、技術は進歩し、企業は利益を求めて活動を続ける。その構造的な成長に乗ることが、長期の資産形成における王道である。

金を保有すること自体が間違いだというわけではない。金は株式や債券とは異なる値動きをするため、ポートフォリオ全体のリスクを下げる効果がある場合もある。

しかし、それはあくまで「保険」としての役割であり、資産全体のごく一部にとどめるのが合理的である。金を資産形成の柱に据えるのは、主食を抜いてサプリメントだけで生活しようとするようなものだ。

輝きに惑わされない

金は、数千年にわたって人類を魅了してきた。その輝きは、私たちの不安や欲望を映し出す鏡でもある。

しかし、資産形成において大切なのは、一時の輝きに惑わされないことである。

「有事の金」という言葉の裏には、「世界がさらに悪くなることに賭ける」という意味が隠れている。それは、資産を増やす戦略というよりも、不安を金で買い取る行為に近い。

地味だが構造的に有利な「市場全体への分散投資」という王道を歩み続けること。世界経済の成長を信じ、企業が生み出す価値の果実を長期にわたって受け取り続けること。それこそが、経済学が教える最も堅実な選択である。

大竹 文雄 大阪大学感染症総合教育研究拠点特任教授

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おおたけ ふみお / Fumio Otake

1961年京都府生まれ。1983年京都大学経済学部卒業、1985年大阪大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年大阪大学経済学部助手、同社会経済研究所教授などを経て、2018年より大阪大学大学院経済学研究科教授。博士(経済学)。専門は労働経済学、行動経済学。2005年日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞、2006年エコノミスト賞(『日本の不平等』日本経済新聞社)、日本経済学会・石川賞、2008年日本学士院賞受賞。著書に『経済学的思考のセンス』『競争と公平感』『競争社会の歩き方』(いずれも中公新書)など。

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