殺意を抱くまで追い込まれる介護離職の過酷 突然降りかかる難題に、企業は備えているか
介護は突然、降りかかってくる。仕事と介護の両立支援を行うワーク&ケアバランス研究所の和氣美枝さんは、「介護サービスを使いながら働き続けることが大事。辞めるとすべてがなくなる」と警鐘を鳴らす。自身も75歳の母親を10年以上前から介護する和氣さんは、「1人で抱え込まず、介護経験者と対話することが重要」とアドバイスする。
介護離職をなくす職場環境の整備
介護は情報戦だ。会社でカミングアウトすれば、同じ悩みを抱える人と情報交換できるかもしれない。会社に知られることに抵抗があるなら、NPO団体や地域が開催する介護者交流会に参加してみてもいい。ケアマネージャーとの付き合い方や役所での手続き、介護の悩みなど経験者が持つ情報量は多い。
介護離職を防ぐため、制度の充実化を進める企業も出てきている。大和ハウス工業は時短・時差勤務に加え、介護休業は“無期限”となっている。介護目的の帰省費用を補填することで遠方介護も後押しする。NECは2010年から、資金的な援助に乗り出した。親との同居や介護のために実家近くへ転居、あるいは親を呼び寄せた場合は50万円を上限に引っ越し代や礼金、仲介手数料の実費を補助する。手厚い制度の背景にあるのは、NECの社員2万4000人のうち、5割が45歳以上という構成比だ。要介護状態の親を持つ社員は2500人いると会社側は試算している(75歳以上の要介護認定率から算出)。
介護制度を充実化させても、離職を防げるとは限らない。最大の障壁は、長時間労働が当たり前となり、休暇取得をよしとしない企業風土そのものにある。女性は出産・育児を通し、ワークライフバランスに重きを置いた働き方が定着しつつある。
しかし、40代以上の男性管理職に目を向けると、柔軟な働き方が浸透している企業は限られるだろう。高齢者の増加に伴い、働き盛りの40~50代男性が介護の担い手となるケースは一段と増えてくる。企業にとっても、ベテラン社員が介護を理由に辞めていく損失は計り知れない。介護離職への対策は、待ったなしの状況にある。
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