ギリシャはユーロ離脱か残留か、繰り返される危機

なし崩し的に離脱に至るか

現状では、ギリシャが積極的に離脱を選択することは考えにくいが、再選挙の結果、急進左派連合(SYRIZA)が政権の座に就き、かつ緊縮財政をめぐってEU・IMFとの交渉が決裂する可能性は残る。ECBも含めた支援が停止して、民間企業もギリシャと取引しなくなる。

「その場合、ギリシャ政府は公務員の給与支払いなどのために、借用証書を発行し、それをユーロと等価とする可能性がある。人々はユーロでの受け取りを望み、借用証書を早く手放そうとするため、これがなし崩し的に通貨代わりに流通する」。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストはそうしたシナリオを予想する。

一方で、EU首脳側とギリシャ新政権の双方が妥協して、ユーロ離脱が回避される道も残されている。

5月6日の選挙では穏健派の新民主主義党(ND)と全ギリシャ社会主義運動(PASOK)の支持者の一部が、支持政党が緊縮財政を受け入れたことに抗議して、投票に行かなかったとされる。「しかし、ユーロ離脱のリスクが高まれば、彼らが投票に行き、穏健派が過半数を握る可能性も高い」(田中教授)。

経済合理性で考えれば、双方が歩み寄るのは当然だが、ギリシャがユーロ圏内にとどまるかぎり、同じ騒動が繰り返される可能性が高い。そもそもギリシャはユーロ加盟時に国家財政を粉飾していた。役人天国で、縁故主義や脱税がはびこっており、財政の立て直しは絶望的だ。

ギリシャは西欧文明の発祥の地ではあるが、15世紀からオスマントルコの支配下にあった。「ルネサンスやスペイン、ポルトガルの商業革命、フランス革命、産業革命、帝国主義といった西欧社会が歩んだプロセスにギリシャは参加しておらず、西欧の価値観を共有していない。また、4世紀にわたって労働の成果を支配民族に搾取されてきたので、一生懸命働くことは損だという考え方が浸透してしまっている」と田中教授は指摘する。

地政学的にも、ギリシャは地中海の要衝で宗教や文化もロシアに近く、旧ソビエト連邦との関係も深かった。西側諸国に対しては脅して譲歩を引き出すという発想が抜けないとされる。「ギリシャは例外」という形でイタリアやスペインへのコンテイジョン(伝染)を防ぐことができれば、ギリシャをユーロ圏から切り離したいというのが、ドイツだけでなく、EU首脳陣の本音だろう。


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