ギリシャはユーロ離脱か残留か、繰り返される危機

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ドイツは断トツの経常黒字国であり(図)、ドイツ国債が最大の資金逃避先だ。TARGET2によって、ブンデスバンク(ドイツ中銀)には、PIIGSの中央銀行への債権が5000億ユーロを突破する水準まで積み上がっている。対して、ギリシャの中央銀行はドイツに1000億ユーロ超の債務がある。

さらに、現在、ギリシャのユーロ離脱観測が高まったことで、手元にユーロを確保しておきたい人々がギリシャの銀行から預金の引き出しを行っている。この“静かなる取り付け”が、“収拾のつかない取り付け”に発展しないのは、ギリシャ中銀がECBの認可を得て、ELA(緊急流動性支援)という枠組みで資金を貸し付けているため。これがまた、TARGET2に対するギリシャ中銀の債務を膨らませる。

国際金融の専門家でユーロに関する多くの著書で知られる田中素香中央大学教授は、「危機時の支援は本来一時的なものだが、ECBの対ギリシャ支援は長期化している。支援打ち切りでトリガーを引くわけにはいかず、ドラギ総裁は苦しい立場に追い込まれている」と指摘する。

22日には、EUによる支援の枠組みに含まれるギリシャ金融安定基金から、資本不足に陥り、流動性供給も停止されているギリシャの銀行4行に対して、合計180億ユーロの資本注入をすることが了承された。

「緊縮財政プログラムの見直しに応じろ」というギリシャの脅しは効果を上げつつある。

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