実績を重ねるにつれ、事業所訪問も任されるようになった。助成金が正しく使われているかをチェックするのだ。
訪問件数にはノルマがあり、ときに危険な目にも遭った。不正受給を指摘した事業所の社長から数時間にわたって倉庫に軟禁されたのだ。このときは「公務員みたいな生ぬるい職場のヤツに、零細事業者の気持ちがわかるか」などと罵倒されたが、毅然と対応したという。
公務員みたいな生ぬるい職場――。給与水準や身分保障が比較的手厚い公務員に対する嫌みのつもりだったのだろう。ほかの事業者から「クビにならなくていいね」と言われることもあった。
非正規職員のミチコさんは、そのたびに複雑な気持ちになった。
ミチコさんは「期間業務職員」。国の機関で働く1年任期の非正規公務員だ。人事院の方針により、選考なしで任用更新できるのは2回までとされてきた。理由は「平等取扱いの原則」のため。公務職場に応募する機会を国民に広く平等に公開する、という意味だ。
このため実績と関係なく3年目には任用を打ち切られ、一般の求職者と一緒に公募に応募しなくてはならない。「3年公募」といわれる仕組みだ。
ハローワークの前に行列
内閣人事局によると、全国の期間業務職員は約3万6300人(2024年7月)。彼らは3年に1度、年明け早々にそれまで自身が担ってきた仕事の求人が出される日付を告げられる。応募枠には上限があるので、当日はハローワークで並ぶことになる。
ミチコさんによると、その日、開庁前のハローワークの前にはバーゲンセールのような行列ができる。
真冬の寒さの中、そこには同僚たちの姿も見える。求人を受け付ける職員の多くも期間業務職員なので、カウンター越しに「がんばってね」「私は来年公募なの」などと励まし合うのだという。
その後、選考が行われるが、ミチコさんの場合は顔見知りの上司たちによる15分ほどの面接だけ。志望動機など聞かれ、後日任用継続を伝えられる。ミチコさんはいつ失業するかわからない不安を抱えながら、こうした公募を3年ごとに乗り切ってきた。


















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