サッポロHD、不動産事業売却後に問われる成長性-「単独では厳しい」との声も
サッポロホールディングスは子会社のサッポロ不動産開発(東京都渋谷区)を売却すると決めた。アクティビスト(物言う株主)から圧力がかかっていた不動産事業分離に道筋をつけたが、企業価値向上への道のりは楽ではない。成長を求めた海外では振るわず、本業の酒類販売で市場が納得するような未来図を描けるかが問われている。
同社は24日、投資ファンドの米KKRとアジア系のPAGが組む陣営に、サッポロ不動産開発を借入金を含め4770億円で売却すると発表した。段階的に出資比率を下げ、2029年6月には完全に手放す。取引で得た資金を活用し、3000億-4000億円を合併・買収(M&A)を含む成長投資に、1000億円程度を2030年度までの株主還元に充てる。
懸案に一区切り
不動産事業の切り離しは、筆頭株主の3Dインベストメント・パートナーズが求めていた。同社は事業利益の約3割を占める不動産事業が酒類などのコア事業の不振を覆い隠し、経営に甘えを生む原因になっていると主張。サッポロHDは24年から、不動産事業への外部資本導入に向けた提案の募集を始めた。プロセス終了直前まで複数の候補との協議を続け、株主価値・企業価値の最大化を確保したと説明する。
懸案に一区切りつき、成長への資金も手に入った。ただアイザワ証券投資顧問部の三井郁男ファンドマネジャーは、利益の成長に投資する長期投資家目線では、競争環境や事業規模からみて、成長ストーリーに期待を抱かせるには「ハードルが高い」と話す。
サッポロHDは重点投資領域として、海外ビール事業やふたを開けてすぐに飲めるRTD領域の強化などを挙げる。だが海外事業では17年に買収した米アンカー・ブリューイング・カンパニーを24年に解散。22年に傘下に収めた米クラフトビールのストーン・ブリューイングでも、「のれん」の一部について139億円の減損損失を計上した。

















