「NISAなんかせずとも良し」、庶民が選ぶべき"最も確実で安全"な資産の守り方は?格差社会を生き抜くために「リスク」は不要

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そこへトランプ大統領が、高い関税をふっかけ、日本をますます不景気たらしめようとしている、この状況でいったいいつ好景気になっていくのでしょうか。我々の国はバブル崩壊以来三十年間、ずーっと不景気のままで来ました。世界の先進国の一人当たり年収が何倍にも伸びているなかで、ひとり日本だけは蚊帳の外、ぜんぜん物価も年収も上がらない、それどころか、非正規のワーカーばかり増えて、生活全体は不安定なものになってきました。しかし、その分、物価はそれほど上がらずに来たので、ほとんどの人はなんとか無事に過ごしてきたというのが現状です。

それが、ここへきてインフレ誘導による物価上昇なんてことを政府は喧伝していますが、でも庶民の収入は増えやしません。春闘のベースアップが満額回答だとかいって、さもさも収入が増えたようなことを言っていますが、それはごく一握りの一流大企業の正規労働者の話です。日本の九割以上は中小企業で、そういうところはずっと苦しい経営状態がつづいて、ベースアップどころではないでしょう。非正規労働ともなれば生活がカツカツなのは目に見えています。

そういう意味では今の政府のやろうとしていることは信用しがたい、と私は見ています。

森永卓郎さんの最後の言葉

こうして、不景気は不景気のまま、物価だけが上がっていく。

それなら、やはり投資をしたほうが……と思われるかもしれませんが、つい最近、がんで亡くなった森永卓郎さん。あの方は最後の最後の、本当に死にそうになってから「NISAなんて普通の人は騙されちゃいけません。あんなことは決してやっちゃいけない」って言っておられました。あれは経済評論家としての本音であり、至言だと思います。少子超高齢社会に入っていく国の株価が、この先ぐんぐんと上がるとは考えにくい。ましてFXだ、暗号資産だとかいうものは、なにがなにやら分からない泡銭のやりとりのようです。決してそんなものに手を出さないのが賢明な年寄りのありようだと思います。

もちろん、私は決してやりませんし、一般の方はぜひおやめになったほうがいい。我々が取り組むべきは、手持ちのお金が減らないように、自分の身辺に冗費がないかどうかよく考え、節約をすることです。

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節約と言っても、生活を汲々と切り詰めましょうという話ではありません。会社勤めをしていた頃は、毎年一着、二着とスーツを作る必要があったかもしれません。でも今はもうそんな必要はありませんから、お金のかからぬシャツにズボンで気軽に暮らす。見栄は張らない。

現役の時は頻繁に外食もしたかもしれない。毎日、職場の近くの店で昼飯を食うだけで千円使っていた人も、リタイアしたらそんな必要はありません。一日千円は一カ月三万円。昼飯を自炊するようにしたら、二万円以上節約できます。

そういうふうにすべてを今の暮らしに合わせて自前で質素にやるように変えていけば、NISAや投資で貯金を殖やそうとするよりも、よっぽど確実で安全に老後を過ごすことができるはずです。

林 望 作家・書誌学者

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はやし のぞむ / Nozomu Hayashi

1949年東京生。作家・国文学者。慶應義塾大学文学部卒、同大学院博士課程単位取得満期退学(国文学専攻)。ケンブリッジ大学客員教授、東京藝術大学助教授等を歴任。『イギリスはおいしい』(平凡社・文春文庫)で91年に日本エッセイスト・クラブ賞、『ケンブリッジ大学所蔵和漢古書総合目録』(P.コーニツキと共著、ケンブリッジ大学出版)で92年に国際交流奨励賞、『林望のイギリス観察辞典』(平凡社)で93年に講談社エッセイ賞、『謹訳 源氏物語』全十巻(祥伝社)で2013年に毎日出版文化賞特別賞受賞。『謹訳 平家物語』全四巻、『謹訳 徒然草』(ともに祥伝社)他著書多数。

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