「松屋」の「六厘舎」買収で懸念される牛丼チェーンの《同質化》問題…「吉野家」の後追いで、終わりなき"ラーメン屋の買収合戦"が勃発か

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今回のラーメンチェーン買収もそうであろう。吉野家に追随して……となると結局、「牛丼各社がどれぐらい人気の中小ラーメンチェーンを買えるか勝負」に突入する。単なる買収合戦が始まり、やはり終わりなき消耗戦に突入してしまう懸念がある。

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確かにラーメン業界は2024年から現在にかけて倒産数は減ってはいるものの、ブランドの数も店舗数も多く、その争いが熾烈であることはいうまでもない。単純に「ラーメン店を買って、市場が広がってハッピー」とはいかないだろう。

これは仮定の話でしかないが、今回の買収をめぐって「ラーメンの味が均質化するのではないか」と懸念する声もあるという。深入りは避けるが、松屋のいう「効率化」にセントラルキッチンの使用も含まれていることを想定してみよう。すると、さまざまなラーメンチェーンを買収しても、ベースの味は似てきてしまうかもしれない。そうなれば、いよいよラーメンチェーンも「お店の数」「値段」などだけで勝負をせざるをえなくなる。

もちろん、ラーメン店の個性は簡単に消えるものではなく、そんな単純な話ではない。ただ、「牛丼チェーンがラーメン屋を買収しまくる」ことで、中長期的に見れば、終わりなき消耗戦が始まってしまう可能性は払拭できないのである。

松屋はどのように「同質化」を避けていくのか

ここで書いてきたことは、ややひねくれた見方かもしれない。それに、あまりにも悲観的すぎる見方であることも否めない。ただ、牛丼チェーンがこれまでも「同質化」に悩まされ、現在も「他業種取り込みによる同質化」が起こりつつあることは、確かに指摘できるはずだ。

先ほども書いたように、松屋はカレー店、とんかつ店、牛丼店の複合店を積極的に展開している。いわば「フードコート」のような店舗であるが、これは他チェーンにはない特徴だ。もしかすると、こうしたフードコート店舗の中に「六厘舎」などが入るかもしれない。その意味では、「六厘舎の買収」を単なる同質化にとどめない「工夫の余地」はある。

いずれにせよ、常に「同質化」を念頭に置きつつ、買収した六厘舎をどのように発展させていくのか、そこが重要になってくることは間違いない。

谷頭 和希 都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。「東洋経済オンラインアワード2024」でMVPを受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ニセコ化するニッポン』(KADOKAWA)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

X:@impro_gashira

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