「松屋」の「六厘舎」買収で懸念される牛丼チェーンの《同質化》問題…「吉野家」の後追いで、終わりなき"ラーメン屋の買収合戦"が勃発か

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そして歴史を見ると、牛丼チェーンの歴史とは、この「同質化」の歴史でもあった。

例えば、値段。現在、大手3社の牛丼の値段はどこも500円前後である。基本的には他社の動向を見ながら値段が付けられている。2000年代初頭の「値下げ戦争」では、各社とも300円以下で牛丼を提供するという思いきった価格設定を行った。価格面でいえば(数十円の差はあれど)、ほとんど横並びになっている。

また、メニューもそうだ。「チーズ牛丼」等をはじめとした「アレンジ牛丼」はすき家が行い始めたが、現在ではそれに類するものが松屋・吉野家でも見られる。これに関連するのが、ターゲット層。すき家の「アレンジ牛丼」は、家族でそれぞれ好きなものが食べられるように作られている。すき家は牛丼チェーンの中では後発組で、「牛丼=男性単身者が食べるもの」というターゲット設定を「ファミリー」にまで拡大したからだ。

すき家
すき家はバラエティ豊かなメニューを次々と展開(写真:筆者撮影)

ところが、ここ数年、吉野家も店舗を改装してカウンター席をテーブル席にするなど、「ファミリー」向け店舗を作り始めている。

専門用語では「コモディティ化」といわれるが、核が「牛丼」という差別化しづらい食べ物なだけに、牛丼業界はこのコモディティ化の影響を強く受けてきた。

吉野家
なんだかオシャレになった、吉野家のファミリー向け店舗(写真:筆者撮影)
吉野家
店舗によってはカフェ風のドリンクコーナーまである吉野家も(写真:筆者撮影)

同業他社との「同質化」がもたらす弊害とは

企業にとっては、同業他社の成功した取り組みを模倣するのは、当然だといえる。短期的に見れば、「成功する可能性が高い」からだ。ただ、そうやって「同質化」が進むと、「各社どこに行っても一緒」という状態が訪れる。

すると、店舗規模を拡大し続けたり、値下げをし続けたりするしかない。ある種の消耗戦に突入してしまうのだ。コモディティ化は中長期的に見れば、じわじわと会社の首を絞める。

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