「ニトリの家具で整えた築古2DKのアパート」「地方都市でかつての同級生と…」 映画『平場の月』が描く、"50代ほどほどの幸せ"の真価
そんな生活が「ちょうどよくしあわせ」――つまりほどほど。それで十分。けれど、ちょっと欠けた部分を補いたい。須藤は青砥に「景気づけあいっこ」をしようと持ちかける。いわば「互助会」だ。
ひとり者同士、励まし合うことにして、ふたりは仕事のあと、地元の焼き鳥屋で飲み食いするようになる。50代になって、ゼロから関係性を築くのはものすごく大儀である。
その点、30年ぶりの再会とはいえ中学時代の友人となると、わりと気軽に話せるものだ。ふたりは「青砥」「須藤」と苗字の呼び捨てで、青砥にいたっては「おまえ」呼ばわり。でもこれくらいの気軽さがなんかいい。
実はふたりは中学時代、ほのかな恋心を抱きあっていたのだが、その特別な親近感と、中学時代というまだ生々しさの薄い時代に築かれた友情プラスアルファのような関係性はおそらくたぶん居心地いい。
結果的にふたりは、かつて実らなかった恋愛関係を取り戻していく。昔から知っている人との再会と関係の再構築。これもひとつの「ちょうどよい」ではないだろうか。
築古2DKのアパート、家具はニトリ
第2の「ちょうどよくしあわせ」は、住まいだ。須藤は安アパートで質素に暮らしている。やがて互助会も、節約のために彼女のアパートでやることになる。
朝霞駅から少し歩いた住宅街にある2DKのアパート。築40年から50年で、いまどきのおしゃれリノベではなく、必要最低限のリフォームが施されている。だから、2間ある2DKの2間とも和室。家具家電は「コジマ、ニトリ」。
ただ2階の角部屋で日当たりはよい。清潔感があり、余計なものがなく潔い感じがする。



















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