家族以外はどうでもいい?アジア人従業員の価値観とは
長期的トレンドとして続く日系企業のアジア進出。1990年代のアジア進出ブームに比べると現在はインフラが整い、規制が緩和され、日系企業にとって進出しやすくなっている。
その一方で、現地人材へのマネジメントに関しては、難しさは何も変わらない。苦戦の裏には「アジア現地従業員と、それを管理する日本人赴任者の間を隔てる思考の違い」がある。今回は、アジア人材の思考について、ジア新興国ビジネスに詳しいネクストマーケット・リサーチ代表の須貝信一氏に聞いた。
--アジア人材の思考の根底にある価値観とは何でしょうか?
もちろん個人差はありますが、アジア人は日本人と比較して「家族観」が大きく異なります。「家族」という特別な価値観の前では、ルールを壊したりすることが許されてしまうところがあります。ある時、私がデリー発バンコク行きに乗った時のことでした。私は離陸時刻ギリギリに機内に乗り込んだのですが、座席番号を見ながら自分の席まで向かっていくと、インド人の男性が座っているんです。「ここは私の席のですが・・・・・・」と、男性にチケットを見せました。
しかし、その男性は何も言わず、「だから、それが何か」という表情をしています。意味がわかりません。隣にいる小さな女の子に気がつきました。その女の子はじっと私のほうを見た後、男性に向かって言うのです。「誰?」。誰って(笑)。それ、こちらのセリフですから(笑)。で、後ろの席の白人ビジネスマン2人がクスクス笑っているんです。彼らが家族だとわかりましたが、そこに客室乗務員が駆けつけてきて、私のチケットを確認して、インド人男性に「席を移動するように」と説得を開始しました。
「いいです。私はこちらの席に座りますので」私は客室乗務員に言い、とりあえず空いている席に座りました。「楽しい家族旅行」という状況がわかれば、誰でもそうするでしょう。邪魔をするつもりはありません。
ただ、客室乗務員とバトルが始まってしまいました。「家族一緒に座りたいだけだから。いいでしょう」「いえ席を移動してください。これは規則ですので」。チーフと思われる男性客室乗務員が現れ、「離陸までは指定席にお座りいただけませんか。その後は席を移ってもいいですから」。