家族以外はどうでもいい?アジア人従業員の価値観とは
逆に、売上高対人件費率が高い業界の企業では、この性質を利用しているところもあります。ソフトウエアなどが代表例ですが、あえて中堅の地方都市に拠点を置いて優秀なスタッフを雇用し、戦略的に人件費を削減している企業もあります。高給よりも地元での就職を望むからです。技術職の場合は、車で3時間、田舎に向かうだけで同一職でも賃金差は2倍、3倍もあったりしますから、企業にとっては重要な戦略です。
--家庭での役割が大きい女性従業員などはどうでしょうか?
特にバングラデシュやベトナムなど繊維産業が多い国では、家庭での役割が大きい女性工員が多く、状況も複雑になりがちです。例えば若い女性主体の繊維工場では妊娠していることが多く、1000人の工場で100人以上が妊娠していて休んでいるなんてことが珍しくないようです。
--従業員の1割が妊娠中というのは驚きます。企業としての対策は?
医務室と応急処置態勢、保育施設のようなものはもちろん、妊婦がケガをしないような通常の安全管理が必要です。中には産休を取ったけれども出産で亡くなってしまう方もいます。「本音としては、いろいろあって困る」ということかもしれませんが、制度としては積極的に応援し、むしろ日系企業として他社と差別化するくらいの姿勢が必要だと思います。制度や設備を置くことで優秀なスタッフを引きつけることができます。
また福利厚生だけでなく、雇用、昇進、解雇にも気を配る必要があります。妊娠自体は何のワガママでもありませんし、めでたいことです。問題はそれに別の要素が加わると事態が複雑になることです。
女子工員は期間工、つまり契約社員であることが多いのですが、契約満了で解雇する時に妊娠しているかどうか気にかける必要があります。なぜかというと、会社の産休や国によっては手当を受ける権利があります。その給付を目前にして、会社が剥奪したと見なされかねないからです。法的には問題ないのですが、実際これが理由でストライキが発生した例もあるそうです。