1つ目は高級車のあり方だ。自動運転によってドライバーが運転から解放されると、自動車に対する価値観が変わる。たとえば、従来は心地よかったエンジン音も、ドライバー自身がアクセルを踏まないと耳障りになるといった変化が起こる。20世紀の100年間をかけて自動車メーカーが積み上げてきた価値観はもはや通用しなくなる。
F015は車内全体がモニターになっており、まるでiPadに入り込んだかのようだ。そこに映し出されるのはこれまで人間が肉眼で見ていた外部環境。ただし、カメラで撮ったままの画像を投影するのではない。現実世界を仮想的に“翻訳”し、親しみやすく表現している。将来的には空間上のモニターにメーターパネル類が表示され、コレオグラフのように、手をかざすなどのジェスチャーで操作できるようになるかもしれない。
また、車内での座り方も今までとは違う。F015はレベル3(半自動運転)からレベル4(完全自動運転)を想定しており、これらのレベルではドライバーには監視義務がない。そのため新幹線のように運転席を180度ひっくり返して後席と向き合うようにレイアウトすることもできる。これこそ多くの人が自動運転と聞いて思い浮かべる使い方だろう。
エラーが発生した際にはどうするのか
問題は何らかのエラーが発生した場合だ。いざというときに運転の主導権を自動運転システムからドライバーへ切り替えるためには、どのようなことが必要なのだろうか。自動運転中もドライバーには監視義務があるとし、つねに運転席で前を向いて座っているとしたら、何かあってもすぐに人間が対応できる。この状態はレベル2と規定されるが、レベル3以上は監視義務から解放された状態を想定している。
つまりドライバーは自動運転中に、ほかのこと(サブタスク)をしてもいい。たとえば、トランペットの練習やスマホでのメールチェック、昼寝などであろう。ただし、サブタスクをしていたドライバーが運転態勢に戻るためには一定以上の時間が必要だ。これをトランジッションタイムと呼び、何秒前に警告を発するのが適切なのか、各国で研究が進んでいるが、「10秒前でいい」という意見もあれば「30秒は必要」との声もあり、今のところ統一見解はない。ドライバーとサブタスクの問題は自動運転実用化に向けて解決すべき課題のひとつだと言える。
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