例えば、先に述べたInterleukin-6は脂肪組織に作用して脂肪を分解したり、筋肉に作用して血糖の取り込みや脂肪の燃焼を高めたりといった代謝を活性化する代表的なマイオカインです。
運動中、筋肉がエネルギー不足になると分泌が高まり、肝臓や脂肪組織に作用し、ブドウ糖や脂肪を血液中に供給させる作用をします。また筋肉側にも作用し、血液中のブドウ糖や脂肪を取り込んで、それらをエネルギー源として代謝する能力を高めます。
Interleukin-6のほか、Interleukin-15、Myonectin、Aperin、SPARC(Secreted Protein Acidic and Rich in Cysteine)などのマイオカインも同様の作用をします。
脂肪組織の働きを変える
脂肪組織を白色から褐色に変えるマイオカインもあります。
体内に存在する脂肪組織のほとんどは、白色をした脂肪組織です。牛肉や豚肉の脂身を思い浮かべていただくとわかりやすいでしょう。
これに対し、褐色をした脂肪組織が少しだけ存在します。
白色脂肪組織が脂肪を貯める場所であるのに対し、褐色脂肪組織は脂肪を燃焼する、まったく逆の働きをする場所なのです。
この褐色脂肪組織は、幼少期には体内にありますが、成長とともに減少し、成人になると鎖骨付近や肩甲骨付近にわずかに残る程度です。しかし後天的な要因によって、白色脂肪組織が褐色脂肪組織に近づく現象がみられることがあるのです。
医学では、これを褐色化(ブラウニング)と呼んでいます。Irisinやβアミノイソ酪酸などのマイオカインは、白色脂肪組織に作用して褐色化を促し、脂肪燃焼力の高い体にしてくれるのです。
運動による認知症予防に貢献するマイオカインもあります。
Cathepsin BやIrisinは、血液と脳を仕切っている血液脳関門を通過することができる特別な物質です。これらは、血液中から脳内に入り、脳由来神経栄養因子(BDNF)という物質を増やします。
BDNFは、記憶や感情を司る海馬の神経を保護し、学習能力や認知機能、うつを改善すると考えられています。さらに、乳酸にも同様の効果があることがわかり、運動による脳機能の改善効果を支えています。
逆に、血液から脳に入ると悪い作用をする物質を、筋肉が無毒化する働きもあります。


















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