「スキーブーム終了による倒産危機」を乗り越えた老舗が放った起死回生の新市場戦略

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告知だけで終わらせない、認知を広げる体験のしくみ

新たな市場を拡大するには、もう1つやり方があります。それは、ピラミッドの裾野を広げることです。

ポールウォーキングのイベントを全国各地で開いたり、集まって定期的に一緒に歩くグループを増やしたりして愛好者を地道に増やすことも、市場の拡大につながります。

ポールウォーキングの分野で後者の役割を担っているのが、日本ポールウォーキング協会の活動です。

自前でコーチを養成して愛好者の裾野を広げる日本ポールウォーキング協会では、ポールウォーキング指導者向けの指導コーチ認定制度を提供しています。資格には「ベーシックコーチ」、「アドバンスコーチ」、「マスターコーチ」の3カテゴリーがあり、決められたセミナーを受講することで資格が得られます。

また、マスターコーチ資格を取得後に規定のインターン実習を行うことで、マスターコーチプロとして認められます。2025年6月現在、全国で65人のマスターコーチプロが活躍中です。

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こうした指導者は、地域におけるポールウォーキング普及の核となってくれる方々です。例えば地方でポールウォーキングの体験イベントを開く際には、コーチの皆さんがポールウォーキングの楽しさや、健康の素晴らしさなどを伝えてくれるのです。

百聞は一見にしかずと言いますが、お客さまに体験してもらうことは、普及を進めるためには何より重要です。コーチの指導でポールウォーキングのやり方を学ぶと、たった30分で背筋が伸びたり、歩く際の歩幅が広くなったりするなど、劇的な変化が現れます。すると、ポールウォーキングの素晴らしさや楽しさが一気に伝わるのです。

コーチ資格を得る人の側にも、メリットはあります。

ポールウォーキングの資格を目指す人の中には、フィットネスインストラクターとして活躍している人が少なくありません。こうした方々にとって、歩き方の改善指導ができるようになれば仕事の幅が広がります。

ここで大切なのが、関わる人の全てにメリットをもたらすしくみを作ることです。

ポールウォーキングをする人は、仲間ができたり健康になったりして嬉しい。普及の旗振り役を担うコーチは、指導の幅が広がったり、多くのメンバーを抱えたりすることでメリットが期待できる。そして販売店やシナノは、ウォーキングポールの売れ行きが伸びて利益が得られる。

このように、自社だけが得をするのではなく、皆がウイン-ウインの関係を作りながらプロジェクトを進めることが、市場創出には大事なことなのです。

柳澤 光宏 シナノ代表取締役

1973年長野県佐久市生まれ。成蹊大学卒業後、日立キャピタルを経て2003年に家業である株式会社シナノに入社、2011年に代表取締役社長に就任。スキーブーム終焉で経営危機に陥った同社を、杖やアウトドア用品などの事業多角化で再建。社員の自走を促す組織文化への転換で、離職率の低い企業風土を実現。直営店展開や海外輸出にも注力し、変化・挑戦・成長を軸に企業の持続的成長を導く。

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