「スキーブーム終了による倒産危機」を乗り越えた老舗が放った起死回生の新市場戦略
ウォーキングポールの試作は、比較的短期間で完了できました。スキーポールとウォーキングポールには共通点が多く、これまでにシナノが積み上げてきたノウハウが生かせたからです。
ただ、良いモノを作ればそれでおしまいというわけにはいきません。なにしろ、ウォーキングポールの市場は当時、影も形もありませんでしたから。例えばスポーツ量販店の店頭に並べようと交渉したら、
「ウォーキングポール? そんなもの誰が買うの?」
と門前払いを食らいましたし、介護用品売り場で売ろうとすると
「うちではスポーツ用品は扱いませんよ」
と断られる始末でした。
当時の日本では、一般道でポールを持って歩いている人を見かける機会が、ほとんどありませんでした。そうした状況でウォーキングポールを売り込んだ結果、皆が訝しんでしまったのです。
そこで気付いたのが、ブルー・オーシャンで勝つには、自分たちで新市場を開拓しなければならないということです。
そのためには、「独自の価値」が必要でした。
レッド・オーシャンでよく見られる既存の価値観とは異なる、全く新しい価値観を提案しなければ、新たな顧客層などつかめないのです。
専門家を巻き込み新市場を育てる
ただし、シナノのようなメーカーが単独でウォーキングポールの良さを伝えようとしても、説得力を高めるのは大変です。なぜなら、シナノには「権威」、すなわち、健康業界や学問領域における知見や業績がなかったからです。
そこで私たちは、その分野で強い権威や影響力を持つ人を探し、商品の開発段階から一緒に取り組んでもらうことにしました。


















