週刊東洋経済 最新号を読む(5/23号)
東洋経済オンラインとは
ライフ #井手隊長のラーメン見聞録

豚汁専門店『ごちとん』の"まるでラーメン店"な発想に驚き! メニュー構成に器、価格設定までも…その戦略に見る「高度なブランド構築」の手法

6分で読める
  • 井手隊長 ラーメンライター/ミュージシャン
2/3 PAGES
3/3 PAGES

また卓上調味料の充実ぶりも、完全にラーメン店のそれに近い。揚げ玉、すりごま、ラー油、七味など、味変を前提としたラインナップが揃い、お客さんが途中で味の輪郭を変えながら食べ進められるようになっている。

豚汁に揚げ玉を落とすという文化は本来一般的ではないが、ラーメン的フォーマットにのっとった食べ方を提示することで、食の楽しさを増幅している。結果として、1杯の中で得られる体験の密度が高まり、満足度が上がり、リピートに繋がる。

客席に置かれている卓上調味料。ラー油にしょう油、奥には揚げ玉も!(筆者撮影)

さらには、価格設定までもラーメンのマーケットに近い。「ごちとん」のメニューは800円台から1000円超えまでの価格帯が中心で、これはラーメンの価格水準とほぼ同等である。

本来、汁物に1000円を支払うことは心理的抵抗を伴うはずだ。しかし、「ごちとん」は商品構成・器・盛り付け・食体験の総合的演出によって、その抵抗感を見事に消し去っている。視覚的・経験的には完全に「麺の入っていない具だくさんのラーメン」であるため、その価格設定はむしろ自然に受け入れられているのである。

「ごちとん」のメニューはどれも具がてんこもりで、インパクトがある(筆者撮影)

ラーメン市場の成功に学んだ「高度なブランド構築」

総じて、「ごちとん」の戦略は豚汁という伝統食を、単なる専門店にするだけでなく、「ラーメン」という巨大マーケットの形式を借りて最適化した点にこそ独自性がある。ラーメンの文法を借りることで、豚汁を一気に現代的な外食フォーマットへと昇華させたのが面白いところだ。

これは、巨大なラーメン市場の成功要因を抽出し、そのエッセンスを丁寧に豚汁へ移植した高度なブランド構築と言ってよい。

「ごちとん」は豚汁をラーメンのマーケット構造へ巧妙に接続する形で、豚汁が家庭料理であると同時に、演出次第で十分に外食の主役になれるという1つの明確な回答を提示した。このモデルは、今後の外食マーケットにおける1つの示唆となるはずだ。

【もっと読む】『マツコの知らない世界』でも注目、ラーメン日本一を争う山形・新潟の「ラーメン文化」が奥深すぎる! ラーメン消費額で常に上位も“納得の理由"では、ラーメンを生活文化として育んできた山形県と新潟県における地域の風土、食の知恵、行政の戦略、民間の挑戦の歩みについて、詳しく解説している。
この連載の一覧はこちら

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象