メニューディスプレイの見た目からして、ラーメン店のそれに極めて近い。大きめのどんぶりを主役に据え、具材の特徴がひと目で伝わるトップビュー的な表現を採用している。従来の豚汁は、具材が細かく刻まれ、汁と混然一体となることで「具だくさんの味噌汁」という枠に収まっていた。
しかし、「ごちとん」の提供する豚汁は、具材を大ぶりに切り揃え、どこに何があるのかが視覚的に明瞭である。特に豚肉の配置は象徴的で、1箇所にどんとまとめて盛られる様は、チャーシューを見せ場として配置するラーメンの構図そのものだ。豚汁の具が、ラーメンのトッピング的存在に置き換わっていると言ってよい。
器のチョイスにも同様の思想が貫かれている。一般的な汁椀とは全く異なる、麺鉢クラスの大容量のどんぶりを採用し、豚汁を主役たり得るサイズ感へと引き上げている。これにより、家庭料理としての汁物から、メイン料理へ明確に転換が図られている。お客さんは見た目的にも無意識のうちにラーメンに並ぶ主役の1杯として豚汁を受け取るようになる。
メニュー構成のバリエーションもラーメン店的な発想
さらに特筆すべきは、メニュー構成におけるバリエーション戦略である。「ごちとん」では、従来の豚汁ではありえなかった多彩なバリエーションが用意されている。野菜多め、辛味噌チゲ、西京味噌サーモン入り、味噌バターコーン、炙りスペアリブ入りなど、ラーメン店がトッピングの差異で商品を展開する手法をそのまま豚汁に転用しているのだ。
家庭料理としてはワンパターン化しがちな豚汁を、カスタマイズを楽しむ1品へと変換することで、消費者の選択体験を大きく拡張している。
味のカスタマイズにおいても、ラーメン的な発想が色濃い。麦味噌・米味噌の2つから味噌を選べる仕組みは、家系ラーメンや二郎系ラーメンのカスタマイズ方式を彷彿とさせる。
味噌という身近な調味料であっても、その種類をわざわざ選ばせることで、専門店ならではのこだわりや自分の1杯を選び取る付加価値が生まれる。そのカスタマイズ化こそが、外食チェーンの魅力の1つであり、「ごちとん」はそこを見事に突いている。



















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