Suicaカードを携帯するだけで歩いて通過できる次世代改札が登場。タッチ不要の乗車体験が生活をどう変えるのか、JR東日本が示した近未来像

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ミリ波改札の強みは、既存のSuicaシステムとの互換性にある。ウォークスルー改札がない地方の駅でも、端末からカードを取り出せば従来通りタッチで利用できる。顔認証の場合、対応改札がなければカードを別途持ち歩く必要があるが、ミリ波方式ならその心配がない。

課題は専用端末の普及だ。現状では、Suicaカードを差し込むカード型と、スマホのUSBポートに接続してモバイルSuicaと連携するタイプの2種類を検討している。端末の価格は生産コストベースで2000円程度になる見込みだが、利用促進のために無料配布する選択肢もあるという。ただし、モバイルSuicaの普及が進む中で別デバイスを持ち歩くハードルは高い。

Suica
Suicaカードを差し込むカード型端末。ミリ波アンテナが内蔵されている(筆者撮影)

ブースの説明員は「ミリ波の送信チップはIEEE標準規格になっている。ソニーと共同研究しており、Xperiaへの搭載を検討している」と話した。スマートフォンへの内蔵が進めば、普及の障壁は下がる可能性がある。

技術選定は1年後、本格導入は10年以内

JR東日本は2025年10月、広域品川圏でのウォークスルー改札実証実験の計画を発表した。2026年春には高輪ゲートウェイ駅と大井町駅で、2027年春には浜松町駅、田町駅、品川駅を加えた5駅で実験を行う。ただし、顔認証かミリ波かといった技術方式は「まったく未定」(ブース説明員)だという。

ブースでの取材によると、どの技術を本格採用するかの判断は約1年後になる見通しだ。顔認証とミリ波のどちらか一方に絞るのか、用途に応じて使い分けるのかも含めて検討中だという。「どれを導入してもおかしくない状況」というのが現時点での位置づけだ。

決済機能の強化も進む。JR東日本は11月25日、モバイルSuica・モバイルPASMO向けのコード決済サービス「teppay(テッペイ)」を2026年秋から提供開始すると発表した。既存アプリのアップデートだけで利用でき、現在のSuicaでは対応できない2万円超の決済にも対応する。Suicaのペンギンは2026年度末で「卒業」し、新キャラクターに交代する。Suicaは「移動のデバイス」から「生活のデバイス」へと、大きく姿を変えようとしている。

改札の風景が変わるまでには、まだ時間がかかる。だが鉄道技術展の会場で、専用端末を手に白いゲートを歩いて通過したとき、その未来は確かに近づいていると感じた。

石井 徹 モバイル・ITライター

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いしい とおる / Toru Ishii

1990年生まれ。神奈川県出身。専修大学法学部卒業。携帯電話専門媒体で記者としてのキャリアをスタート。フリーランス転身後、スマートフォン、AI、自動運転など最新テクノロジーの動向を幅広く取材している。Xアカウント:@ishiit_aroka

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