日本の重要資源が海外流出中?《EVバッテリー》流出が暗示する「8兆円市場喪失」の未来

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ただし、現時点では、各社で診断手法や診断結果の算出方法が異なり、ユーザーにとっては「どの技術を使って、何を評価すればいいのか」がわかりづらい側面がある。

さまざまな電池診断技術の特徴を生かしつつ、ユーザーにとっても使い勝手がよくなるような、電池診断技術の利用に関わる方針・環境の整備が必要だ。

「EV鉱山」の価値を最大限使い切る

では、電池診断技術等の活用により中古EVの国内での活用が進めば十分かというと、必ずしもそうではない。なぜなら、その先のリユース・リサイクルへの接続にもハードルがあるためだ。

近年、多くの民間企業や地方自治体において、中古EVの試験導入やリユース電池のエネルギーマネジメントへの活用など実証的な取り組みが活発に進められており、政府も技術開発や実証事業への支援を進めている。

しかし、実態としては事業化に至らず単発的に終わってしまうケースが少なくない。その理由として、特定のプロセス(EV利用・リユース・リサイクル)における課題解決を図るだけにとどまってしまい、前後のプロセスとの連携が不十分なままとなっていることが挙げられる。

例えば自動車の解体業者には、EVを解体してバッテリーを取り外す機能だけでなく、バッテリーの状態を診断してリユース・リサイクルのどちらに回すかを判断する機能も求められ、さらにはそのためのリユース電池製造事業者・リサイクル事業者とのネットワークの構築も必要となる。

前後のプロセスを担う民間企業等とのネットワーク形成と、不足する機能の補完には事業者の努力も求められるが、国としてリユース・リサイクル市場をどのようなプロセスを経て立ち上げるのかを明確にするとともに、これらの活動を促進するための政策を提示する必要があると考えられる。

EVの普及は世界的に見ても一時的に鈍化傾向にあり、特にアメリカの動向が不透明であるなど課題は多いが、カーボンニュートラルの実現に向けて今後も継続的に普及が進むことは確実だ。

EV鉱山の価値を最大限に使い切ることが、巨大なマーケットの創出と資源安全保障の両立には不可欠である。

籾山 嵩 日本総合研究所 創発戦略センター インキュベーションプロデューサー

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もみやま たかし / Takashi Momiyama

京都大学工学部卒業、京都大学大学院工学研究科修士課程修了、愛媛大学大学院連合農学研究科博士課程修了。2013年に新日鐵住金(現・日本製鉄)入社後、2023年に日本総合研究所に入社。EVバッテリーの資源循環に関する調査研究や日本総研が主催する「EV電池スマートユース協議会」の運営等に注力している。

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