日本の重要資源が海外流出中?《EVバッテリー》流出が暗示する「8兆円市場喪失」の未来
日本総合研究所は、中古EVの売買に関する市場、リユース電池の売買に関する市場、リサイクルにより回収されたレアメタルの売買に関する市場などから構成される「EVバッテリーのサーキュラーエコノミー市場」の規模を試算した。
足元では数百億円程度であるものの、2030年には6000億円規模、2050年には8兆円規模に達すると見込まれ、大きなポテンシャルを秘めている(図2)。新規市場の創出が進むことで、新たな技術やビジネススキームが生まれれば、さらなる波及効果も期待される。
他方、近年では第2次トランプ政権下における関税政策や中国の輸出規制をはじめとして、レアアースをめぐって保護主義的な政策が世界的に推進されており、資源獲得競争が激化している。
もはやバッテリーは現代における産業・生活のインフラとなっていると言っても過言ではない。レアメタルのほぼ100%を輸入に頼るわが国では、常に希少資源の調達リスクと向き合わざるをえない状況が続いている。
このように、EVバッテリーを対象としてサーキュラーエコノミーを形成することは、新規市場創出や資源安全保障の観点で重要性を増している。
中古EVの大半が海外に流出している
しかし、国内市場においてサーキュラーエコノミーの形成が順調に進んでいるかというと、実態はそうではない。最大の課題は、バッテリーを搭載したまま、中古EVの大半が海外に流出していることだ。
中古EVの輸出台数は年々増加傾向にあり、足元では年間2万台程度の中古EVが輸出されている。日本総研の試算では、24年時点で、国内でこれまでに発生した中古EV(約11万台)の実に約83%が輸出されたと推計される(図3)。
EVバッテリーも中古EVに搭載されたまま海外に流れているため、バッテリー製造に用いられたレアメタルもあわせて流出していることになる。
レアメタル(リチウム・コバルト・ニッケル)の流出量を金額に換算すると約175億円、重量では約4300tに達する。今後、もし中古EVの輸出台数の増加傾向に歯止めがかからず、さらに保護主義的な政策の影響により資源価格が高騰するようなことがあれば、EVバッテリーの流出がさらに加速する懸念もある。



















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