「40代男性の謎の死」現場にあった"紙切れ"が語った真相。そこに書かれていたこととは――軽く考えてはいけない"死に至る病"のサイン

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腐敗遺体にまで進むのは一人暮らしの人が亡くなった場合に多いのですが、いわゆる孤独死・孤立死というのは、高齢者だけでなく40歳代や50歳代の単身居住者にも少なくありません。

若い人ほど発見が遅れやすい

むしろ働き盛りの若い人ほど、自身の死を想定しておらず、周囲にも気づかれにくいため、発見が遅れて腐敗しがちです。

とくに、一人暮らしで会社などに属さず、生活保護などの制度から孤立し近隣住民や親族との関係も希薄な場合、誰にも知られずに亡くなるリスクが高まります。

たとえ勤務先があっても、単身赴任、テレワーク、休職などで自宅に1人でいる時間が長ければ発見の遅れにつながります。なかには自宅で自殺し、長期間経過した末に見つかるケースもあります。

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死亡時期の推定にしても、早期死体現象の段階ならある程度まで死亡日時を推定できますが腐敗が進むとそうはいかなくなります。

死体所見(といっても、腐敗の程度やウジの成長など)や環境捜査をもとに推定しますが、腐敗の速度は遺体の状況や周辺環境によっても異なるので、異臭が充満しハエが飛び交う部屋で死者の日常生活や体調急変時の状況につながる資料を探し出すことになります。

一人暮らしだと生活状況を知る人も少ない印象です。腐敗すると命日も推定できないことがあるのです。

家族の心情も気にかかります。離れて暮らしていて、しばらくその死に気づかなかっただけで、遺体が生前の面影もないほど腐敗していたら、発見した家族の精神的衝撃は計り知れません。

大事な人の変わり果てた姿を見て、亡くなったこと以上に、早く気づいてあげられなかったことを悔やんだり、腐敗した姿を見たことでトラウマを抱えたりすることもあります。

山形 真紀 立教大学社会デザイン研究所研究員

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やまがた まき / Maki Yamagata

1972年生まれ。95年立教大学法学部卒業後、民間企業勤務を経て96年より埼玉県警察に奉職。生活安全部、警察学校などを経て、2021年から24年まで刑事部捜査第一課に配属。検視官として約1600体の遺体の検視に従事し、多数遺体対応訓練や東京五輪テロ対策(検視)に携わる。23年立教大学大学院社会デザイン研究科修士課程を修了。25年3月に警察を退職。現在は認定NPO法人難民を助ける会(AAR Japan)で災害支援業務に従事するとともに、立教大学社会デザイン研究所に所属し「大規模災害における多数遺体の処置、遺体管理」などをテーマに調査研究を進めている。

写真©Yoshifumi Kawabata/AAR Japan

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