定番のホームドラマ激変、「共同生活もの」が増える理由~『ぼくたちん家』『終活シェアハウス』『ひらやすみ』が映し出す新しい「ホーム」
最初大学に馴染めず、さぼったりしていたなつみは、横山あかり(光嶌なづな)という気の合う友達もできてそれなりに楽しく日々を送っている。将来の進路の悩みはあるようだが、まだ切実なものではない。
ヒロトは、輪をかけて気ままな暮らしぶりだ。「悩みはあるの?」と聞かれて「ない」と即答し、「くよくよしても仕方がない」と答える。料理好きで、毎日の食事をつくることに喜びを感じるという慎ましやかな日常だ。
「モラトリアム」を正面から描くドラマは珍しい
『ぼくたちん家』や『終活シェアハウス』と比べると、『ひらやすみ』の2人はまだ年齢も若く、人生の大きな選択を迫られていない。ヒロトにしても、「29歳でフリーター」という状況を心配して色々言ってくるような大人は周囲にいない。なつみのことを気にかけてはいるが、自分がそうなのでこちらから積極的に相談に乗ろうとはしない。
こうした人生の猶予期、いわば「モラトリアム」を正面から描くドラマはいまどき珍しい。何事も競争化が進む社会のなかで、誰もがいつも全速力で生きることを求められる。この『ひらやすみ』は、「平屋」という住居、阿佐ヶ谷という街が醸し出す空気感も相まって、そんな世の流れに対する一種のアンチテーゼにもなっている。
純粋な「共同生活もの」とは少し違うが、もうひとつふれておきたいのが『小さい頃は、神様がいて』(フジテレビ系)である。
このドラマには、同じマンションの各階に住む3世帯の住人が登場する。
まず、小倉渉(北村有起哉)とあん(仲間由紀恵)の夫妻とその娘・ゆず(近藤華)、そしていまは仕事の関係で離れて寮暮らしの息子・順(小瀧望)の小倉家。次に会社を定年になった永島慎一(草刈正雄)とさとこ(阿川佐和子)の高齢者夫妻。そして樋口奈央(小野花梨)と高村志保(石井杏奈)の若い同性カップルの3組だ。
3組それぞれの物語もあるのだが、このドラマがユニークなのは、3組が小倉家のリビングに集まって食事をともにし、語り合う場面が毎回登場し、そこで話が大きく進むことだ。たとえば、小倉夫妻の考えている離婚のこと、娘夫妻の事故死によって永島夫妻が引き取ることになった幼い2人の孫のこと、また奈央と志保の念願であるキッチンカーの資金のことなどが率直に話し合われる。



















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