定番のホームドラマ激変、「共同生活もの」が増える理由~『ぼくたちん家』『終活シェアハウス』『ひらやすみ』が映し出す新しい「ホーム」

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『終活シェアハウス』が描く世代間交流

『終活シェアハウス』(NHK BS)は、そんな「家を選ぶ」時代の典型的なドラマだ。

奥村歌子(竹下景子)は料理研究家。「いずれひとりになったら一緒に暮らそう」という約束を果たし、小学生時代から60年来の友人である今井厚子(室井滋)、池上瑞恵(戸田恵子)とともに3人で共同生活を送っている。さらに歌子はスーパーで見かけた大学生の速水翔太(城桧吏)を「秘書」にスカウト。翔太は内心互いに好意を抱く専門学校生・林美果(畑芽育)とともにシェアハウスを手伝い、食事をともにするようになる。

3人には、もうひとり同じ約束をしていた旧友・緑川恒子(市毛良枝)がいた。だが消息不明。翔太が調べてみると、恒子はMCI(軽度認知障害)という診断を受け、施設に入ることを考えていた。それでも3人は恒子をそのまま受け入れ、説得してともにシェアハウスで暮らすことを選ぶ。

終活をポジティブにとらえ直す

終活というものをポジティブにとらえ直そうとするこのドラマのポイントは、異なる世代の交流に比重が置かれていることだろう。

ここでは、高齢の女性たちだけでなく、将来の進路に悩む2人の若者に同等の比重が置かれている。翔太と美果は、大きく年の離れた女性たちと接するなかで人生観に変化が起こり、最初は戸惑いを感じつつもネガティブな自分を少しずつ克服していく。またその姿は、終活と向き合う4人の女性たちにも翻って影響を及ぼしていく。

その意味で、世代を超えた交流、世代を超えて通じ合うことの大切さが伝わってくる作品である。

『ひらやすみ』が表現する今という時代へのアンチテーゼ

一方、『ひらやすみ』(NHK)は、今という時代を感じさせる若者たちの「共同生活もの」だ。

生田ヒロト(岡山天音)は29歳。元は俳優をやっていたが、いまは釣り堀のアルバイトで生計を立てるフリーターだ。

ヒロトは、ある日たまたま通りかかった平屋建ての家を気に入る。そしてそこでひとり暮らしをする高齢の女性・和田はなえ(根岸季衣)を毎日のように訪ねるほど仲良くなる。

ところがはなえが急死。ヒロトは、身寄りのなかったはなえの遺志で家を相続することになった。そこにヒロトのいとこ・小林なつみ(森七菜)が美大入学のため山形から上京。なつみとヒロトの平屋建て一軒家での共同生活が始まる。

ヒロトとなつみの生活には、大きな事件はなにも起こらない。ヒロトの高校からの親友で近所に住む野口ヒデキ(吉村界人)や家を管理してくれる不動産会社の社員・立花よもぎ(吉岡里帆)が遊びや用事のためやってきたりする程度だ。

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