花王「アタックZERO」CM出演の"彼"は何者か? サッカー日本代表・W杯連続出場を支え続けた《裏方のプロ》キャリア26年の軌跡

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首尾よくコインランドリーを探せたとしても、今の夢フィールドのように効率よく洗えるとは限らない。深夜早朝も洗濯に奔走する羽目になり、寝る暇がないという状況も日常茶飯事だった。「本当に効率よくやらないと時間がなくなっちゃうんで、どうしたら迅速に作業を進められるのかをつねに考えて行動していました」(山根さん)。

予期せぬアクシデントも起きがちだ。その最たるものが、滞在していたホテルのコインランドリー用貯水槽の水がなくなってしまった事件だ。

「00年の出来事なんですが、成田空港近くに宿泊していて、早朝に出発を控えた夜中の3時頃にいきなりホテルのコインランドリー用の水が使えなくなってしまった。あのときは本当に困りました。すぐに警備員に電話して、何とか水を入れてもらうことができましたけど、本当にドキドキが止まりませんでした」と、山根さんは若かりし日の動揺を述懐する。

槙野、内田、香川たちが紡いできた伝統

現在も世界各国に遠征。選手の衣類を洗濯・乾燥し、快適な状態に整え続けているわけだが、神経が休まることはない。そんなときに助けられたのが、選手の協力だという。

「練習の後、アイテムごとに置いてくれるので、仕分けの手間が省けるんです。一般家庭でもそうでしょうが、裏返った靴下やシャツを元に戻すのは案外、手間のかかること。でも、日本代表の選手たちは試合後の興奮状態のとき以外はそういうことは一切ないです」と、山根さんは感謝を口にする。

キットマネージャーにとってありがたい習慣が始まったのは、山根さんが年代別代表をサポートしていた00年前後だという。10代の若手に「シャツとパンツ、靴下をアイテムごとに置いて」とお願いすると、全員がすぐに実行。それが上の世代にまで普及していったのだ。

「僕が帯同した07年U-20W杯のメンバーだった槙野智章さん(品川CC監督)、内田篤人さん(解説者)、香川真司選手(セレッソ大阪)なんかが好例ですけど、ユース代表から五輪代表、A代表と上がっていっても、ずっと習慣を続けてくれました。それが当たり前の文化になっているのは、本当にすばらしいことです」とうれしそうに言う。

「W杯の際、日本代表のロッカールームにはごみ1つ落ちていない」「日本のサポーターは自ら掃除をしてスタジアムから引き上げる」という称賛の声がしばしば世界各国で聞かれる。日本代表のスタッフ陣も、そうした日本人の丁寧さや気配りに支えられているようだ。

後編に続く)

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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