花王「アタックZERO」CM出演の"彼"は何者か? サッカー日本代表・W杯連続出場を支え続けた《裏方のプロ》キャリア26年の軌跡

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「森保監督や選手たちが試合後のフラッシュインタビューで話をする場面を間近でよく見ますけど、90分戦った疲れがあるうえ、気持ちが高揚していたり、落ちていたりするときに人前でしゃべるのは本当に大変なこと。僕も今回、こういう経験をさせてもらって、それがよくわかりましたし、改めてリスペクト(尊敬)の念を抱きました」(山根さん)

撮影から1カ月余りが経過した6月1日にCMが解禁。ちょうどタイミング的に26年北中米W杯・アジア最終予選のオーストラリア戦・インドネシア戦の強化期間と重なったこともあり、関係者からの反響は大きかった。6月の2連戦に参戦するメンバーはもちろんのこと、オフシーズンで夢フィールドを訪れた欧州組からも声をかけられたという。

「長友佑都選手(FC東京)や堂安律選手(フランクフルト)からは『山根さん、何やってるの』『なんで山根さんなの』という感じでイジられたりしましたね(笑)。共演させてもらったのは松坂さんと間宮さんでしたし、選手たちも『俺も出たい』と思ったのかもしれません。僕としては、キットマネージャーの仕事を一般の人に広く知ってもらえるいい機会になったことに感謝しています」と、山根さんは目を輝かせる。

キットマネージャーだからこその職業病

畳み終わり
ものの数秒で、ご覧のとおり、きれいに畳まれた(写真:筆者撮影)

前述のとおり、キットマネージャーの業務は多岐にわたるが、代表合宿中の洗濯はとくに重労働の部類に入る。森保ジャパンを例に取ると、選手26~27人に加えて、コーチ陣、テクニカルスタッフ、トレーナーや事務方スタッフなどが30人くらいいて、総勢60人弱の洗濯を連日しなければならないのである。

「夏だったらシャツにパンツ、インナーシャツ、ソックスが練習ごとに出てきますし、冬の場合はジャージ上下やウインドブレーカー、手袋やネックウォ―マーとかも加わってくる。1人9アイテムくらいになります。それプラス、普段の生活で着るスウェット上下やTシャツ、ハーフパンツ、部屋着もあるので、合計1人15アイテム×60人分を毎日洗わないといけません。活動拠点の夢フィールドには大型洗濯機が3台あるんですが、1日最高で6回は回している状態です」と、涼しい顔で言う。

夢フィールドには大型乾燥機も5台設置されており、それらをフル稼働させて、毎日3時間程度は洗濯・乾燥・畳み作業に費やしているという。とはいえ、乾燥機も洗濯が終わったら何でも放り込めばいいというわけではない。乾きやすいものと乾きにくい厚手のものとを分けながら、少量に分けて乾燥機に入れるといった、細かい判断が必要になってくる。

20年に夢フィールドができてからは最新鋭の洗濯機・乾燥機が導入されたからまだいいが、それまでの日本代表は福島県のJヴィレッジや千葉・習志野の第一カッターフィールド、大阪のJ-GREEN堺などでトレーニングをすることが多かった。その頃は専用で使える洗濯機があるとは限らなかった。

「18年ロシアW杯前の日本代表は習志野での練習が多かったんですが、そのときはグラウンドとホテルとの道中にあるコインランドリーを探して、洗濯をこなしていました。量が量なので、コインランドリーもそれなりに規模が大きくないと難しい。日本代表のゲームも全国各地で行われるので、街を歩いたりするときはどこにコインランドリーがあるのか、自然とマメにチェックするようになりました」と、仕事柄の苦労を打ち明ける。

次ページ予期せぬアクシデントも…
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事