「心のうねりはあったけど、照之の人生」 90歳の浜木綿子さんが語る…シングルマザーとして育てた《息子・香川照之》の驚く決断を受け入れたワケ

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猿翁が創作の際に利用していた軽井沢の稽古場を照之たちが片づけに入った時のことだ。

「猿翁さんと私が2人で写っている写真が大量に保存されていたそうです。『いっぱいあるので、笑いながら見ていたんだよ』と照之が言いました。どうして取ってあったのでしょうか。もうあっちへ行ってしまったからわかりませんが、今頃私の両親にも会っていることでしょうね」

團子に感じた「俳優の素質」

現在は中車も團子も歌舞伎を中心に舞台活動を続けている。中車は、当初の新作歌舞伎中心から経験を重ね、「傾城反魂香」の又平など古典作品でも重要な役を演じるようになった。

團子は期待の若手花形として、「ヤマトタケル」のヤマトタケルや泉鏡花作「天守物語」の姫川図書之助など大役を演じる機会も増えた。團子は幼いころ、浜の自宅の庭でよく遊んだという。

「植木屋さんに入ってもらったばかりで、思い切り枝を切ってもらって涼し気になった庭木を私が『ツンツルテンのツンツルテン』と表現したら、政明は面白がって笑い転げていました。空の飛行機を見上げて『おーい』と叫んだ時、声がよく通るなと思いました。私が関西弁で話してみると、すぐにイントネーションをそっくりまねたので、耳の良さを感じた覚えもあります」

後半2つの感想は俳優ならではと思われる。歌舞伎界入りし、俳優になるとは予想していなかったであろうに、浜は團子の素質を早々と感じ取っていた。

「母が政明を、『阿都子に似て滑稽な子だね』と言っていたのを思い出します」

團子に浜について聞いてみた。

「女優さんと言うより、僕にとってはおばあちゃんです。ですが、『舞台に出る時は堂々と自信を持って』『ペース配分をしっかりしなさい』とアドバイスをくれます。そんな時、女優さんとして生きてきた人なんだと感じます」

中車はどうだろう。

「労働して生きる糧を稼いできた人で、僕にとっては母親というより父親的な役割だった気がします。私の演技は必ず見て、何か言ってくれます。舞台人として生きて来て日本舞踊も稽古していますから、すごく的確でありがたいですね」

小玉 祥子 演劇ジャーナリスト

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こだま しょうこ / Shouko Kodama

東京都生まれ。毎日新聞社で学芸部専門編集委員として同社や専門誌の演劇の取材、評などを担当し、2023年独立。 著書に『芝翫芸模様』(集英社)、『二代目 聞き書き中村吉右衛門』(朝日文庫)、『完本 中村吉右衛門』(朝日新聞出版)、『艶やかに 尾上菊五郎聞き書き』(毎日新聞出版)など。

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