「心のうねりはあったけど、照之の人生」 90歳の浜木綿子さんが語る…シングルマザーとして育てた《息子・香川照之》の驚く決断を受け入れたワケ

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照之、政明は公演に向けての稽古に入った。

同年5月24日。浜は照之に「今日は車がないので、政明をお稽古場に連れて来て」と頼まれた。スーパー歌舞伎は古典歌舞伎と仕掛けも異なる。稽古は倉庫街にある大きなスタジオで行われていた。浜と8歳になる政明が現地に向けて移動中の車内に照之から電話が入った。

「『猿翁さんが今日見えるよ』『じゃあ悪いけれど私は行きません。運転手さんに政明を頼んで途中で降ります』と断ると、『どうして? いいじゃないか』と言うんです。嫌だなと思いながらも、そのまま乗っていたら、今度は『猿翁さんが来られなくなった』と連絡が入りました。それなら現地まで行こうと思いました」

スタジオの入り口で猿翁門下の俳優らと迎えに出た照之はその場で猿翁が来ることになったと告げた。

「『それなら帰ります』と言うと、照之は『政明のお稽古を少し見ていったら?』と勧めます。私は震えるようなちょっと不思議な感覚を覚えました」

元夫・猿翁と40数年ぶりの再会

スタジオ内で待つことしばし。到着した猿翁は一番前の椅子に腰かけた。照之は浜に猿翁に挨拶するようにうながした。

「お姿を見て『変わられたな』と思いました。私も覚悟を決めて、猿翁さんの座る椅子のそばにひざまずいて、『こんにちは、浜木綿子でございます』と話し掛けました。猿翁さんは『若いね』と一言。そして『照之を、こんなに立派に育ててくれてありがとう。大変だったでしょ』と続けられたので、『大変でした』と答えました」

猿翁はおもむろに紙袋から包みを取り出して浜に渡した。

「『これ誕生日プレゼント』。私の誕生日は10月31日なんですけれどね(笑)。いただいたら、照之が満足そうに笑っていました」

その場を立ち去ろうとしたが、稽古を見ていくように一同から勧められた。

「政明のワカタケルの稽古でした。『もっと大きな声で』と指示されると、あの子はその通りにちゃんと言うんですよ。周りのみなさんが拍手をしてくださいました。『良かった。言えるんだ』とほっとしました」

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