実は根底で共通する「ひろゆき的思考」と「陰謀論」を拡散する人の危うさ

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その根底には「損なわれている社会を取り戻したい」という欲望が存在する。損なわれたものに気づきさえすれば、努力が報われる社会に移ることができるからだ。

この社会は、見えない何かが損なわれ、隠されている。それに気づいた人だけが、救われる。同じ物語が語られ続けている。

陰謀論の構造に気づいても報われない現実

さらに実は「考察系YouTuber」と銘打つチャンネルが、都市伝説として陰謀論を伝えている場合もしばしばある。考察文化と陰謀論は相性が良いのである。

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陰謀論は、悪意なく信じている人もいるが、アフィリエイトサイトや動画再生で広告収入を得るために意図的に拡散している人も少なくないという(『陰謀論』より)。

インターネットが報酬という形で報われる場になってしまったからこそ、陰謀論は拡散され続ける。その構造に「気づく」ことの難しさは、現代日本の大きな政治的困難を生み出す。

陰謀論が収入のために生み出された噓であるだなんて、その言説を見て信じる人にとって、生きづらさが報われるための正解にはならない。

だから難しい。気づいても報われない現実がある。だってこの社会は何かが損なわれているのだと語る人を、ほかに誰が救うことができるのだろう。

三宅 香帆 文芸評論家

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みやけ かほ / Kaho Miyake

1994年生まれ。高知県出身。京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了。

2016年「京大院生の書店スタッフが「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」と思う本ベスト20を選んでみた。 ≪リーディング・ハイ≫」がハイパーバズを起こし、2016年の年間総合はてなブックマーク数ランキングで第2位となる。

その卓越した選書センスと書評によって、本好きのSNSの間で大反響を呼んだ。『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)、『「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない 』『12歳までに身につけたい 自分の「好き」をことばにできるノート』(いずれもディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。

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