実は根底で共通する「ひろゆき的思考」と「陰謀論」を拡散する人の危うさ
そのスタート地点が「現世を支配しているが気づかれていない悪の権力」であるとするのが陰謀論である。あるいはそのスタート地点が「気づかれていないプログラミングや投資の手法」であるとするのがひろゆき的思考なのである。
「動く」自己啓発書から「気づく」陰謀論へ
私は「ひろゆき的思考」が危険だと言いたいのではない。投資の知識やプログラミングが実際に自分を助けてくれることは大いにある。むしろ注目すべきは、「ひろゆき的思考」の書籍や動画を拡散させている欲望──令和の人びとの志向──だと思っている。
堀江貴文の『多動力』をはじめとする平成の自己啓発書は、「もっと世界を豊かに」「もっと楽しく」「もっと成果を出す」といった論理を説いていた。だからこそ行動を重視したのだ。
しかし「ひろゆき的思考」や陰謀論は異なる。「マイナスをゼロにする気づき」を与えるのである。それは、従来の自己啓発書ではエンパワーメントされない人びとを癒やす。そして、努力が報われる世界に変わってほしいという人びとの欲望が隠されている。努力して成功したい、ではない。努力した分だけ──誰にもその成果が損なわれることなく──報われたいのだ。
損なわれたものを取り戻したいだけだ。それは外部環境に対する働きかけである。
自己啓発書とは、外部環境を度外視し、自分の行動を変えることに注力するものだ(拙著『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で解説したので、よければ読んでみてほしい)。
が、陰謀論はむしろ、損なわれた外部環境に気づくことで、正常な環境を取り戻そうとする論理である。掲示板からSNSへ変化し、発言に対して「いいね」「フォロワー数」などの「報われポイント」が生まれた。そして自己啓発的言説から陰謀論的言説に流行が変化するようになった。



















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