実は根底で共通する「ひろゆき的思考」と「陰謀論」を拡散する人の危うさ

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

たしかに西村が管理人を務めていたアメリカの匿名掲示板「4chan」は、このような陰謀論が広まる場だった。といっても、YouTubeのような動画配信サイトでも陰謀論は広まっており、陰謀論の拡大の場は匿名掲示板に限ったことではない。

だが、陰謀論の論理を考えてみると、それはじつは「ひろゆき的思考」と非常に近い。「ひろゆき的思考」は、まさに自分たちの環境や生活は、「気づいていない」、つまり隠された抜け道やコツがたくさん存在することを前提とする。マイナスが存在する環境に「気づく」ことが重要だと彼は説く。

もちろん、それだけでは決して陰謀論と同じものだとは言えない。しかし、陰謀論の論理──自分たちの環境や生活には隠された意図があり、それが自分たちに何かしらのマイナスを生んでいる──はまさに同様の前提を共有しているのだ。これは「陰謀論的思考」(conspiracy thinking)と呼ばれている(『陰謀論』より)。

「世界のスタート地点が間違っている」という思考

ここで大切なのは、自分たちのマイナスをつくっている原因に気づくことだ。「ひろゆき的思考」も「陰謀論的思考」もこのような論理を共有する。

①そもそも、重要なことが損なわれている社会(世界)で自分は生きている
②そういう①のような社会(世界)をつくった、大きな権力が存在する
③損なわれた真実を知れば、自分は②のつくった社会(①)から抜け出すことができる

ここで求められるものは、悪の権力を倒してくれそうな誰かを探すことではない。世界には悪の権力が存在しており、その悪の権力に騙されないことによって、自分は正しい場所に戻ることができることを求める。悪の権力が、「ひろゆき的思考」の場合は旧来的な日本企業体制であったりムラ社会的な空気の読み合いだったりするのである。

つまりこういう論理だ。

──そもそも、自分の立っている世界のスタート地点が間違っている。だから人生を変えるには、スタート地点を変えるしかない。

次ページ令和の人びとの志向が「ひろゆき的思考」を拡散させる
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事