熊本は「第二の台湾」になるのか? TSMC進出が招いた"豊富な水"が枯渇する日

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水資源のイメージ
大規模な半導体工場やデータセンターの建設は、地域の水資源にどのような影響を与えるのでしょうか(写真:kuuudooo/PIXTA)
世界の半導体市場が拡大する中、その製造拠点として日本、とりわけ「豊富な地下水」を持つ熊本に、TSMCが巨額投資を伴う進出を果たしました。この「半導体バブル」は経済効果をもたらす一方で、地域資源に深刻なプレッシャーを与えています。本稿では『水の戦争』より一部抜粋のうえ、地域経済の活性化と水資源の持続可能性という「究極の二律背反」に直面している地域の実態を解説します。

台湾は水不足…TSMCが熊本を選んだ理由

2021年、台湾の半導体大手・TSMC(台湾積体電路製造)の熊本進出は、国内外で大きな注目を集めました。熊本が選ばれた理由の一つに安定した水資源の存在があります。

熊本県では生活用水の約8割が地下水でまかなわれ、地下水の管理や保全の取り組みも進んでいるため、半導体製造には理想的な環境です。TSMCの第1工場や第2工場(計画中)を合わせた年間の取水量は803万立方メートルとされています。

一方、TSMCの本社がある台湾では、慢性的な水不足が続いています。たとえば2020年には台風の上陸が一度もなく、ダムの貯水率が著しく低下しました。

TSMCは節水設備の導入や再生水の利用などの対策を講じたものの、水不足は生産に影響を及ぼし、結果として他の産業や一般家庭、農業用水にまでしわ寄せが生じ、大規模な給水制限が実施されました。こうした経験を踏まえ、TSMCは水資源の安定確保の重要性を痛感し、水に恵まれた熊本への進出を決断したと考えられます。

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