熊本は「第二の台湾」になるのか? TSMC進出が招いた"豊富な水"が枯渇する日

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半導体企業誘致による地域経済の活性化と水供給体制の整備は、いまや切っても切れない関係であり、多くの自治体が水のある土地を戦略的資源と位置づけ始めているのです。

とはいえ、テクノロジー企業の誘致を加速させることには注意が必要です。たしかに、日本の年間平均降水量は世界平均の約2倍にあたりますが、急峻な地形のために多くの水が短時間で海へ流出してしまいます。また、人口密度の高さを考慮すると、1人あたりの水資源賦存量(ふぞんりょう)は世界平均の約半分にすぎません。

とくに地下水については、その重要性や脆弱性に対する社会的な共通理解が十分とは言えません。私たちは、地下水が人間の活動とどのように関わり、地域に何をもたらしているのかを本当に理解しているでしょうか。

かつて日本各地では、地下水の過剰な汲み上げにより、湧水や井戸の枯渇、地盤沈下、塩水の浸入といった深刻な被害が発生しました。テクノロジー企業による大規模な水利用が進む中で、同様のリスクを見過ごすことはできません。

熊本県は2025年4月、半導体工場が集積する地域において、2030年には地下水位が2023年比で最大1.12メートル低下する可能性があると公表しました。

県が示した予測では、半導体工場が年間1200万立方メートルの水を汲み上げる想定に加え、工業化に伴って周辺の田畑や森林が減少し、地中にしみ込む雨水の量が減ることで、地下水の涵養力が低下するとされています。

地下水は、一度枯渇すれば回復に長い年月を要します。地域経済の活性化と水資源の持続可能性をいかに両立させるか——それは、今後重要な課題となるでしょう。

建設が増加するデータセンター

半導体工場と同様、日本各地で急増しているのがデータセンターです。

『データセンター調査報告書2025』によれば、2024年時点で日本国内の商用データセンターでは約63万ラックが稼働しており、大型のハイパースケール型が約39万ラック、中小規模のリテール型が約34万弱を占めています。

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