「未練はある。続けたい」それでも家族のために引退 最初は妻が辞めると言っていたが・・・寺田学議員(49)が明かした理由と永田町への違和感
家庭の大黒柱となって、家族を養うべき――。以前ほどではないものの、アンコンシャスバイアスの一つである「大黒柱バイアス」に苦しむ男性は今も少なくない。夫妻の地元、秋田県は19年連続で自殺率ワーストを記録したことがある。女性よりも男性のほうが高く、男性の主な自殺理由・原因では、経済・生活問題の割合も高いという。
学氏が選択したのは、キャリアの一時的な中断ではない。大卒後、三菱商事に就職。秋田県知事の息子として国政に進出し、権力の中枢である首相官邸で、最高権力者の補佐官としてど真ん中で活躍してきた。
競争社会から降りることへの葛藤は?
周囲からは「子育てが終わったら、親の介護に一段落ついたら、戻ればいいじゃないか」と言われるものの、「20年やってきたから、もう一区切り。いつか戻ろうという立場に自分を置くと、つらくなる」(学氏)として、国政復帰のみならず県知事選など地方政治への挑戦も否定する。引退後は、静氏の議員事務所に顔を出し、力添え役にとどまるという。
華やかなキャリアを歩み続けた男性として、競争社会から降りることへの葛藤や不安はないのか。
「落選したとき、そういう思いになるかと思ったけど、何かね、ないのよ。それって説明しづらいよね。いや、お金の心配とかあるよ。当時は無職になっちゃって、子どももできたからどうしようって思ってたけど、自分が社会から外れたみたいな感じもなく。
浪人中に、秋田市長選にも落ちて、否定され続けたけど、別に気にせず、子どもと一緒にふらふら歩いてたんだよね。俺、出世欲がないのよ。よくないと思うけどね」
屈託なく話す一方で、心の奥底に沈殿し、隠しきれない思いも交錯する。
「未練はあるよ。そこは素直に言う。もう、続けられるんだったら、この仕事続けたいなと思う。だけど、ここ数年地元に十分帰れずに、お叱りも受けてきた。地元活動を中途半端なままにするなら、やはり申し訳ない。議員を続けたいって気持ちは、それは当然あったけど、続けたいって思いだけで続けられるもんじゃないんで」
長男には数年前から「ダダ(学氏の呼び方)は、政治家を辞める」と伝えていた。嫉妬ではなく敬意を表しながら、母親を支える父親の姿はどう映るのだろう。「長男が将来、伴侶を得たときに『(夫婦)お互いを尊重していこう』ということを、親の背中を見ながら思ってくれればいいなとは思ってます」と、期待を込める。
共働き世帯数が半数を超えてから四半世紀が経過し、働き方や家族の在り方は多様化している。寺田家のように、お互いで協議を重ねたうえで価値観や考えをすりあわせて、それに根ざした行動に踏み切る夫婦やカップルは少なくないだろう。ジェンダー平等の実現に向けた「ジェンダー主流化」の動きも顕在化している。
しかしながら、有権者の意見を届けるはずの国会議員に目を向けると、働き方も価値観も、時代の変化には十分に対応しきれていない。「ワークライフバランスという言葉を捨てる」と表明した高市首相は、選択的夫婦別姓問題にも明確に反対姿勢を貫く構えだ。


















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