「妻の海外駐在」に帯同した夫が直面する切実問題 『妻に稼がれる夫のジレンマ』小西一禎氏に聞く

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『妻に稼がれる夫のジレンマ』著者の小西一禎氏
小西一禎(こにし・かずよし)/ジャーナリスト。1972年生まれ。慶応大学卒業後、共同通信社に入社。政治部で首相官邸などを担当し、2017年に配偶者の海外赴任への帯同に伴う休職制度を利用。妻・2児と渡米。在米中に退社。元米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。専門はキャリア形成とジェンダー。(撮影:梅谷秀司)
「夫が稼ぎ、妻が支える」という性別役割分業意識は、日本において今なお根強い。
一方、女性の社会進出に伴い、企業の総合職や経営者、政治家など、かつては主に男性が担ってきた仕事をする女性は増加。妻のキャリアを優先すべく、休職して転勤に帯同する、主夫になるといった選択をする男性が登場し始めた。妻に稼がれる夫となったとき、「男の沽券」の行方とは。自らも、妻の米国駐在に帯同した経験のある著者が迫った。
妻に稼がれる夫のジレンマ ――共働き夫婦の性別役割意識をめぐって (ちくま新書 1773)
『妻に稼がれる夫のジレンマ ――共働き夫婦の性別役割意識をめぐって』(小西一禎 著/ちくま新書/990円/256ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──ジェンダー問題が主題ですが、もともとこの問題に理解があるわけではなかったようですね。

まったく理解していなかった。2017年に妻の米国赴任に伴って休職するまで、政治記者として20年以上働いた。メディアはいまだ男性優位社会で、女性の登用が遅れている。しかも取材対象は、マッチョでないと生き残れない永田町。まさに「男社会を2乗したような世界」で生きてきた。

私生活でも、家事・育児は共働きの妻が主に担っていた。妻は、私の仕事が激務で時間に融通が利かないのを理解していたので、出産後は時短勤務をしていた。残業ができない中、昼休みさえ削って効率的に働いていたそうだ。

だから今振り返ると、働く女性からすれば許しがたい態度を取ってきた。キャリアのために収入のほとんどを保育園やベビーシッター代につぎ込む同僚の女性に、「何のために働いているの?」と心ない一言をかけた記憶がある。時短勤務の女性記者を、内心「使いにくいな」とも思っていた。

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