──現在の中国の農村社会を包む空気を「まったり感」と形容しているのが印象的です。
中国人14億のうち、10億は農村とその周辺に軸足を置いて生活している。中国の都市化率(都市に住む人口の比率)は2023年で66%にまで上昇したが、農村戸籍のまま都市に住む人も多い。そうした人々の生活基盤は今でも故郷の「県」にある。
中国では、中央政府の下に省、市(地区)があって、その次が県となる。伝統的に、中央から官僚が派遣される最末端の単位が県だ。これが全国に2000ほどあり、平均的な人口規模は50万人といったところだろう。県は都市と農村の双方を含む最もコンパクトな地域社会(県域社会)で、中国社会の「細胞」だといっていい。
県の中心である小都市「県城」の雰囲気はどこも似通っている。北京や上海のような大都市の競争社会とはまったく違い、ぬるま湯につかって現状維持をよしとする「まったり」としか形容できない空気だ。そして習近平政権が進める「新型都市化」とは、小都市である県城に若い世代の農民を引きつけ、「まったりした世界」に同化させる取り組みだとみている。
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